ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

新しい通貨の普及と課題 デジタル通貨時代に先駆けて

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今日は「お金の雑学」として未来の通貨について話して行く。最近はテレビを見ていても新型コロナウイルス関連のニュースが多いから、どうしても他の問題に関心が向き難くなっているんだけど、その最中にあっても政府はデジタル通貨の研究を着々と進めているんだ。理由は中国のデジタル人民元の実現が迫っているからなんだけど、そこには基軸通貨の交代など様々な要因がある。2024年には新紙幣に切り替わるのに何故今になってと思うかも知れないけど、私たちの価値観がどうであれ、時代は移り変わり、金融システムも転換期を迎えて行く。新時代の通貨を受け入れるかどうかを議論する前に、先ずは従来の通貨と向き合いながら、改善点を模索して行こう。ここではみんなも既に利用している電子マネーの話も取り入れながら、まったくより良い通貨について考えていきたい。

 

 

長引くデフレを解決したい 通貨流通量を促進する方法はあるのか?

 

 不安に比例して蓄積される個人貯蓄

わが国では昔から質素倹約は美徳とされてきたが、これは個人レベルでの話だ。経済全体で見れば、むしろ悪行に近い行為と言える。デフレの最中に金融緩和でマネ―ストックを増やしたところで、個人も企業も積極的に融資を受けようとする人は少ないだろう。景気の後退から事業を縮小する企業も増え、雇用も安定しない。こうなってくると、将来への不安から更に貯蓄が増えて行く。日本におけるタンス預金額は国民全体で50兆円とも言われていたが、今年になって100兆円に登るとも試算されている。一説にはコロナ禍で消費が落ち込んだことが原因とされているが、いずれにせよ需要を生み出して供給を引き出してやらなければならない。これに関しては、過去の記事でMMTを解説しているのでそちらに譲るとして、公共投資の不足以外に景気回復を阻害している問題について考えてみると、資金の滞留が少なからず悪影響をもたらしていると言えるだろう。もちろん、失業して明日を生きるお金もない人もいるけど、疑心暗鬼から消費を抑え込み、ひたすら使わずに貯め込む傾向にあることは、昨年度(2020年)に日銀が発表した資金循環統計(7~9月期)の結果からも明らかだ。それによると、9月末時点で個人(家計)が保有する現金・預金額が1034兆円とされている。2019年と比べて4・9%も増加しているんだ。

 

 現金主義は悪なのか? デジタル通貨の普及で変わる世界

経済産業省が電子決済(電子マネー)の普及を促進してきた理由には消費を促す狙いがあるとされている。便利で決済が効率的だからとか、現金よりも衛生的(スマホも汚いとか言わないでくれよ?そこは各自で除菌するなりしてくれ)だとかの理由もあるんだけど、もちろんそれだけではないよ。そうまでして電子マネーを使ってもらいたいのは、お金を使うことに対する心理的ハードルを下げるためでもあるんだ。現金を使うとき、人は精神的苦痛を味わうのだという。「お金持ちになりたければ長財布を使え」とか「お金を大切にしなさい。ピン札を持つと良い」とか言われるのは風水的な理由というよりはお金を使うことへの心理的なハードルを上げるためでもある。長財布だと紙幣が曲がらないし、そこにピン札を入れれば綺麗なままだ。そうすると、尚更使いたくなくなってしまう。と、これはあくまでも節約、貯金分野での話で、マクロな視点で見ればできるだけ貯め込まないで使って供給を促進して欲しいんだよ。例えば、タフツ大学でデジタル通貨を研究しているバスカー・チャクラボルティ教授なんて「現金は経済にとって害だ」とまで言ってしまっている。どういうことだよって思った人はじっくり考えてみて欲しいんだけど、現金主義は消費を抑制する以外にも賄賂やヤミ金業の存在できる環境を作ってしまった元凶だと言える。賄賂なんて、電子マネーで授受していたらすぐに見つかってしまうよね。闇金に関しては未だに借主が悪と誤解している浅はかな人がいるんだけど、ヤミ金業者が何をしているのか考えたことはあるだろうか?出資法に抵触する莫大な利息を取り、金融庁に営業許可も取っていないから当然税金も納めていない、挙句反社会組織の活動資金として流れている。明確な法律違反を「借りたものは返せ」という道徳心で庇っている愚か者の多さには驚愕するが、それは個人の勉強不足の問題だからこの際どうでも良い。現金の便利さ、手軽さの裏にはそうした反社会的組織に利用機会を与えているのだという副作用があることを知っておこう。

 

ハーバード大学の経済学者、ケネス・ロゴフ教授によると、現金の多くが地下経済に流れているのだという。日本のヤミ金と同様に、税金を支払われることもなく、ひたすら地下組織の活動資金になっていたり、汚職に使われているんだ。その総額は、アメリカでは1兆4300万ドルだから、米国のGDP(約21兆ドル)の7%もあることになる。

こうした通貨の悪用を防ぎつつ、自然にお金を使ってもらえるようにするための方法として、先に話した電子マネーは有効となる。支出の心理的ハードルを下げ、尚且つ悪用され難いという観点からも広く勧められる決済手段だと言える。そこには当然、ハッキングによる強奪や不正の恐れがないとは言えない。新しい法定通貨の形であるデジタル通貨の利点が銀行強盗被害を減らせるというが、昭和の時代じゃあるまいし、今時銀行には多額の現金を置いていることなんてまずないよ。消費を促す以外の利点としては効率と衛生面、そして年間2兆円もかかっている現金輸送費用の軽減だろうか。現在、政府通貨のデジタル化も検討されているけど、災害国では現金を完全に廃止することは難しいかも知れない。そうなると、現金と電子マネーの比率は7:3ぐらいが妥当だろうか。いずれにしても共存の形を取ることになるのだろう。

 

国家から独立した貨幣「仮想通貨(暗号資産)」の有効性

 

ビットコインのような仮想通貨の場合には中央銀行のような管理者が存在しないため、金融政策による影響を受けることがない。また、為替や貿易摩擦に左右されることもない。発行量はプログラムによって決められているため、増やすことができない。取引記録は全使用者が共有していて、複数のパソコンで記録が取られているから不正があってもすぐに発覚する。技術的な課題は残されているものの、テクノロジーに信用を支えられた暗号通貨は新たなお金の形として期待できるものだと考えられている。しかし、よく考えてみて欲しい。現状、注目されているのは技術的な課題ばかりで、政府が行う政策をどうしていくかについては議論されていない。中央銀行の政策や為替や貿易摩擦に影響されずに独立した通貨を国民が保有したとして、経済政策はどのようにしていけば良いのだろうか。我が国のような災害国では、当然、公共政策は不可欠だ。コロナ禍で痛感した人も多いだろうが、助成金や給付金などの福祉政策も必要となる。政府が一切介入することがない仮想通貨を中心に経済がまわるようになった際の徴税方法の検討や相場変動への対策も必要だ。過去に何度も話しているけど、税金には通貨の信用を支える意義もあるんだ。要するに、日本円がないと税金を納められないから、仕方なくみんなが日本円を使っている。米ドルで買い物できるお店なんて無いだろう?これについては他国における税の役割にも同じことがいえる。一つの通貨の形として暗号通貨は存在できたとしても、主要な通貨になることは政策の観点から見て難しいだろう。しかし、ビットコインの要である取引データ技術であるブロックチェーンはデジタル通貨の開発に応用可能だ。仮想通貨の存在は、新たな法定通貨の誕生に寄与したんだ。

 

有効期限内に消滅するお金「スタンプ通貨」で消費を促す

 

これは「錆びるお金」とも言われていて、要するに、期限内に使わないと無効になってしまう通貨だ。私製通貨であるポイントに近いだろう。お店でもらえるポイントには長短問わず有効期限があるからね。とはいえ、多くのポイントは最後の買い物(新規ポイント追加)時点で有効期限が延長される。これを繰り返せるからポイ活が成り立つんだけど、期限の延長がなく、一律定められた期限内で使い切らせるアイディアがスタンプ通貨なわけだ。筆者も某家電店で頑張って貯めた結構な金額のポイントがチャラになったことがあるんだけど、それとまったく同じ悲劇が現金でも起こり得るということだ。堪ったもんじゃないね。とにかく消費を促したい、タンスに貯め込んでいる高齢者にも利用機会を与えようという意味では斬新なアイディアなんだけど、これを普及されると国民は将来のための貯蓄がまったくできないことになるよね?ただでさえ老後2千万円問題で騒いでいるというのに、期限付き通貨なんて普及させられるのだろうか。そして、資本主義のステータスである金融資産○円以上の富裕層のような称号も無くなることになる。資本主義の終焉が課題であればこれ以上のアイディアは存在しないのだろうけど、国民の将来への不安は続くことになる。しかし、毎月確実に飢えない程度の所得が約束されるのであればスタンプ通貨も悪くないだろう。そういう意味では、ベーシックインカムをスタンプ通貨で配布するという方法は使えるかも知れない。平成11年の小渕政権下で実施された地域振興券の配布がこれに近い形だろうか。ベーシックインカムとの違いは、全国民ではなく経済的弱者に限定されるが、困窮者の消費を促すには悪くない方策だったと筆者は考えている。しかしながら1度切りの配布では持続的な効果は得られないだろう。半年から1年間継続して特定層に配布するという試みがあっても良いかも知れない。ベーシックインカムの検証でクーポン通貨を配るアイディアは是非とも実現してもらいたい。

 

以上が現在知られている未来の通貨の形だが、どの形式を取るにせよ現状の通貨と併用されることになるだろう。それでも、数億、数千万円という資金をタンス預金することで「お金の血栓」を作り経済を停滞させている一部の富裕層の存在を思えば、相応の比率で消費を前提とした期限付き通貨やデジタル通貨に段階的に切り替えて行くことは有効だろう。電子通貨で心理的ハードルを下げるだけでも十分効果はある筈だ。

 

今日は新しい通貨の形について説明してきた。実用化が急がれているデジタル通貨についてはまた別の機会に話したいと思う。

 

それでは、また次の記事で。

モバイルSuicaのチャージトラブルに遭遇したときの対処法

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「その他」の項目では経済・ビジネスと同様に筆者の興味対象でもある電子マネーやガジェットに関する話題を取り上げていくつもりなんだけど、今回の記事がモバイルSuicaになってしまったのはお察しの通りだ。多少なりとも電子マネーに詳しい人は予想していたトラブルかも知れない。

 

2021年3月20日の午前11時から翌日3月21日の午前7時までの約20時間に渡ってモバイルSuicaの大規模なメンテナンスが行われたことは、各種メディアが広く取り扱っていた話題だから知っている人も多いだろう。筆者もその一人だった。ちょうど電子マネー関連の記事を取り上げるつもりでいたし、私的にモバイルSuicaの導入を検討していたタイミングでもあったので、メンテの知らせには意表を突かれた気分だった。とはいえ面倒は避けたいので、無事に終了するまで待つことにしたんだ。

 

そしてメンテナンス終了日の3月21日(日曜日)の午後、予期せぬ悲劇に見舞われることとなる...。

 

今日はモバイルSuicaのチャージトラブルに遭遇した際の対処方法について話して行く。

 

 

チャージだけ持って行かれた!?アプリの予期せぬ挙動に困惑

 

筆者は元々電子マネーも興味対象としていたので、導入はしていなくてもモバイルSuicaの設定から使い方までの知識は一通り持ち合わせていたんだけど、さすがにシステムの問題には対処のしようがない。

 

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※画像はカードタイプのもの

 

アプリをダウンロードしたあとは、カードの種類を選択して新規発行手続きに移る。筆者は機種変更時のデータ移行を考慮して氏名・生年月日・性別等の情報を登録する記名式の「My Suica」を選択した。

 

情報の入力から初回チャージ金額の選択、入金方法までの手続はスムーズだった…が、ここで思わぬアクシデントが発生する!

 

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なんと、チャージ完了後、Walletアプリへの追加でエラーが発生してしまった。「カード会社に問い合わせ中」から先へ進めない。通常、長くても30秒程度で終わるものだ。これ以降、同様の操作を繰り返すも変化はなく、執拗に繰り返すとApplePay側にロックがかかる恐れがあるため止むを得ずキャンセルをした。事前に情報を入力していたし、パスワードも記憶しているからWebサイトから入って確認できるだろうと考えたんだけど、そもそも入力した会員情報も残っていなかったんだ。要するに、チャージだけ持って行かれて会員情報は消失していたということだ。

 

慌ててモバイルSuicaに電話するも繋がらない!?

 

ここで注意して欲しいんだけど、モバイルSuicaは会員or非会員を問わず電話による問い合わせ先は全てナビダイヤルという通話料が割高な電話番号になっている。当日は不具合の多発で問い合わせが殺到していたらしく、オペレーターとは一度も話すことができずに終わってしまったので、通話料金だけ失って何一つ解決できなかった。かけ放題なんかのプランも適用外なので、油断していると高額な通話料金が発生してしまうから気を付けた方が良い。

 

モバイルSuicaに限らず0570から始まる電話番号で「ナビダイヤルでお繋ぎします。この通話は、20秒ごとに10円の通話料金でご利用いただけます」みたいなアナウンスがあったらメールやチャットなどの別な連絡手段を考えた方が良いだろう。焦っているときはすぐにでも口頭で解決したいという気持ちになってしまうんだけど、このご時世で信じられないことにフリーダイヤルどころか通常の電話ですらないナビダイヤルを窓口に使っている企業は存在する。それでも代表窓口以外は通常の電話番号を用意しているところが多いんだけど、知る限りチケットぴあとモバイルSuicaはナビダイヤル以外の問い合わせ先番号を用意していない。尚、ナビダイヤルは一般電話やIP電話からはかけられないので必然的に携帯からかけることになる。

 

Apple Careは神対応!それでも解決が難しいこともある

 

天下のAppleはもちろんフリーダイヤルだ。iPhoneサポートでも素早く的確な対応をしてくれるプロフェッショナルの集まりだ。解決の難しい問題でも真剣に相談に乗ってくれる。しかし、今回のケースはモバイルSuica側の通信エラーなので、Appleからはサーバーに情報が残っているのかどうかを確認することができない。あくまでもJRのシステムの問題だ。

 

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Apple CareではWalletアプリにカードを追加する方法などのApple Pay操作に関連したサポートに応じるのが通常の業務内容となる。そもそもモバイルSuicaアプリの登録段階でエラーが発生しているので対処のしようがないんだ。

 

チャージ元の電子マネーorカード会社に連絡してみるも…

 

とはいえチャージだけ持って行かれたのでは堪ったものではない。せめてお金だけは返して欲しい。騒動の最中に同様の相談を筆者は受けたんだけど、中には数万円もチャージしてしまって泣きそうだという人もいた。その人はカード会社に連絡して対応待ちだったんだけど、この場合「先ずは利用先店舗に対応してもらってください」と事務的に返される可能性が高い。筆者がまさにそれだった。電子マネーの事務局に事情を詳細に説明したのだけど「利用先のお店から返金してもらってください」というマニュアルをコピーしたような返答だった。ちなみに、このコピペのような返信に丸1日を要している。

 

最後の手段、一か八かで会員専用サイトからメール連絡を試みる

 

これについてはApple Careのサポート担当者も「難しいかも…」という口振りだったんだ。何故かと言うと、モバイルSuicaではメールやチャットでの受付を会員専用として設けているからだ。筆者は間違いなく会員登録操作をしているんだけど、サーバーとの接続でエラーが発生していたため会員情報が登録されていない可能性が高い。事実、サイトにログインを試みたが失敗に終わってしまった。

 

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※Suica識別IDがないのでWalletから登録することもできない

 

だからと言ってこれ以上無駄な出費はしたくない。JR東日本の窓口に問い合わせたときにもナビダイヤルを勧めてくるけど、その通話料を負担するのはこちらだ。自動音声の段階から割高な料金が発生して、オペレーターに繋がってから事情を説明するまでに要する通話料は相当高額なものになるだろう。余裕でチャージ金額を超えてしまいそうだ。何が何でもメールで解決できないと困る。そこで筆者はメールフォームからの連絡を試みた。アプリに入力したのと全く同じ情報を入れて、現在に至る経緯と要望(Suicaの新規登録でチャージを戻してもらうだけでも良い)を伝えて待つこと2日、一切の返信なく電子マネーに返金された。安堵はしたものの、新規登録の状況や入力した個人情報の取り扱いがどうなっているのかに関する説明は一切なしだ。こちらとしては形式だけの謝罪なんかは不要だが、個人情報についての説明だけは欲しかった。

 

と、悶々とすること凡そ1週間、もうメールチェックすらどうでもよくなっていた頃にようやく回答が送られてきた。結論として、会員登録情報は残っていなかった。

 

レビューの低さが全てを物語っている

 

これだけ便利なアプリなのになぜ評価が低いのか不思議で仕方がなかったんだけど、改めてレビューを確認してみると、既に1年以上前からチャージを巡るトラブルが発生していたことが分かる。GAFAのような世界的影響力を持つ超大手企業でさえユーザーを重んじ、サービスの充実と改善努力を怠らない姿勢を貫いているというのに、JRほどの会社が何年間もユーザーの要望を聞き入れず、アプリを改善しようともしていない。これはひとえに、純粋な民間企業ではないからではないかと筆者は見ている。JRの前身は旧国鉄だ。民営化されたとはいえ、殿様商売がまかり通った時代の名残は依然として根強く残っているのかも知れない。

 

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フィンテックが金融業の覇権を握りつつある昨今、多くの電子マネーと同様に交通系ICカード決済もその便利さから注目を集めている。特に首都圏では通勤、通学から日々の買い物に至るまでSuicaだけで完結させる人も少なくないだろう。筆者の友人に聞いたところ、Suicaはカードでしか使っておらず、今のところトラブルには遭遇していないそうだ。お金を預けるわけだから、無用な問題は避けたい。どうしても利用したいのであればカードタイプを使うようにした方が安全なのだろう。

 

今日は話題のモバイルSuicaについて筆者の経験を基に対処方法を取り上げてみた。同じ思いはして欲しくはないけど、もし同様のトラブルに遭遇したときには参考にして欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。

楽天経済圏入門 必須アイテムと攻略法

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この「お金の雑学」コーナーでは、副業や節約といった“お金を稼いで貯める”ために必要な知識も紹介するつもりだ。筆者のプロフィールにもある「身近なお金の話」をここで取り上げていくことになる。

 

第1回目のテーマはタイトルにもある「楽天経済圏」だ。

お金や節約の話に興味がある人なら聞き覚えのある言葉かも知れないね。

 

 

節約やポイ活好きの間でこんなにも楽天経済圏が話題になっているのには理由があるんだ。

メリットとして大きいのは、今までしてきた買い物やサービスを楽天に移行させるだけでポイントが貯められるところにあるだろう。要するに、手間暇かけずに稼ぐことができるということだ。

※楽天ポイントは楽天カードの支払いや買い物にも使えるから現金に近い使い方ができる

 

節約と聞くと、生活を切り詰めながら頑張って貯金するという印象があるけど、楽天経済圏はその逆で使って得する生活術と言えるだろう。

 

楽天経済圏の必須アイテム

 

やり方はいたってシンプルだ。先ずは楽天市場で会員登録をしよう(既に持っている人はそのIDを使っても良い)。

 

取得したIDは楽天が展開する各サービスを利用する際に共通して使うことができる。一つのIDで統一できるから管理しやすいし便利だよね。

 

楽天IDの取得の次に必要になるのが楽天カードだ。

これは必須アイテムだから、楽天経済圏に参入すると決めた段階で作った方が良い。

 

通常カード(俗に言う平カード)であれば年会費は永年無料で、楽天以外での買い物でも1%(100円の買い物で1円相当)のポイント還元が受けられる。他の無料カードの還元率と比較すると割高なことが分かるだろう。

 

hb.afl.rakuten.co.jp

 

新規発行&利用で5000ポイントをもらったら、それを新たな買い物やカードの支払いに充てることができる。この時点で既に5千円も節約できたことになる。

 

最近では、街での買い物(ネットショッピングを含む)で一定額を楽天カードで支払うだけでポイントがもらえるキャンペーンも開催されている。

楽天カードを持っているだけでSPU*(スーパーポイントアップ)プログラムの対象としてポイント還元率が2倍になるのも見逃せない。

*ポイント還元率のこと。楽天の各種サービスを使うことでSPUが上げられる

 

カードの支払い口座を楽天銀行にすることも忘れないで欲しい。これだけでSPU1倍が適用されるからね。

 

SPUでブーストをかける

 

さて、スタート時点での楽天ポイント倍率はどうなっただろう。楽天市場でのSPUを確認してみようか。

 

楽天市場(楽天IDの取得) 1

楽天カード 2

楽天銀行+楽天カード 1

楽天市場アプリ 0.5

※2倍=2%のこと

 

もう既にSPUは4.5倍になっている。

楽天ブックスで本を買うようにすれば、更に+0.5倍だから還元率は合わせて5倍だ。

 

そこから先は必要に応じて、少しずつでも楽天関連サービスへ移行していけば良い。

一例を挙げればスマホを楽天モバイルにして+1倍、ネット回線を楽天ひかりにして+1倍、これで6.5倍の還元率が確保できることになる。

 

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これらの支払いを楽天カードにすれば、アプリで常に資金管理ができるし、家計簿の機能も付いているから無駄な出費を抑えることもできるだろう。

 

楽天カードは学生や主婦でも作れる、クレカ入門者に優しい審査となっている。

 

将来のためにクレヒス*(クレジットヒストリー)を構築しておきたい人にとっては最適なカードといえるだろう。

*CIC、JICC等が保有する信用情報のこと。クレジットカード発行や各種ローンを組む際に過去の支払い実績が審査の参考にされる

 

楽天経済圏攻略においてこのSPU(スーパーポイントアップ)プログラムを上げておくことで効率的にポイントを貯めて節約につなげることができる。

 

最初のうちは楽天カードを使って買い物してポイントを貯めつつ、徐々に関連サービスに移行していくようにすれば良いだろう。無理はしないで、自分が使ってみたいサービスからはじめていけば良いよ。

 

他のポイントサイトとの組み合わせ&アプリの活用

 

そして、これが意外と見逃されがちなんだけど、楽天サービスを使う際には是非、ポイントサイトのハピタスを介して利用して欲しい。楽天での通常の買い物や関連サービスの利用でも別途ポイント還元が受けられるので、ポイ活で節約したい人には利用しない手はないよ。

 

hapitas.jp

 

筆者は必ずというほどハピタスを経由することを忘れてしまうので、ポイントを獲得し損ねている。ここで学んだ人には忘れずに利用してもらえるようにしたい。

 

準備は出来ただろうか。ここで、楽天市場アプリも是非入れておこう。これを通して買い物するだけで+0.5倍だから使わない手はない。それと、なるべく本は楽天ブックスで買うこと。送料無料だし、還元率も先に説明した方法で行えば5倍になる。電子書籍派であればKoboを使えば良いだろう。

 

他の関連サービスの敷居が高いと感じる人でもこれくらいならできる筈だ。

 

楽天カードと楽天銀行はいずれも必須アイテムだから忘れないようにしよう。これについては誰が解説しても同じことを言っている筈だ。

 

楽天カードの支払い(引き落とし口座)に楽天銀行を設定するだけで、普通預金の金利がメガバンクの40倍(0.04%)の年利を確保できるから、使わない理由はないだろう。

 

楽天経済圏参入者は要確認!楽天カードSPU還元率の一部変更について

 

楽天カードSPU(スーパーポイントアップ)プログラムの一部が改定される。

 

公共料金等の支払いで楽天カードを利用した場合

 

楽天カードによる公共料金(電気、ガス、水道)、税金(国税、都道府県税等)、国民年金保険料、Yahoo!公共料金の支払いで得られていたポイント還元率が変更される。

従来はショッピングと同様に100円につき1ポイント獲得出来ていたんだけど、2021年6月利用分からは500円につき1ポイントになる。つまり、1%から0.2%への還元率変更だ。

 

これについては引き続きポイントの還元は受けられるので利用しても損はないと思うよ。他社のクレジットカードでも還元率は1%に満たないものが多いのだから、それほど大きな打撃ではないと筆者は見ている。

 

楽天でんきのSPUキャンペーンが終了する

 

楽天でんき(基本料金無料)の新規加入&利用による楽天ポイント+0.5倍のSPUキャンペーンは2021年5月31日月曜日をもって終了することが決まっている。2021年6月1日火曜日以降はSPU対象外となるので要注意だ。

既に楽天でんきに加入していて0.5%の還元率を獲得している人は、今のうちに楽天市場の買い物でSPUを活用しておくことをお勧めする。

 

楽天ゴールドカードの還元率変更について

 

また、楽天ゴールドカードがSPU4倍から2倍に変更されることも抑えておきたい。

これまでは年会費(税込み)2,200円を支払ってもSPU4倍で元を取ることができたんだけど、今後はそれも難しくなるよ。

 

それでも楽天経済圏はオワコンではない

 

こうした還元率の変更を受けて楽天経済圏の今後を危ぶむ見解が見られるんだけど、筆者としてはそこまで長期的な影響はないのではないかと考えている。

それというのも、新規事業として力を入れている楽天モバイルの赤字が原因だからだ。新事業が軌道に乗るまでの期間はだいたい5年はかかる。赤字解消後は他の楽天サービスも改善されていくだろう。あくまでも中期的な損失と見て良い筈だ。

もちろん、長期(10年以上)に渡って赤字が続くようであればどうなるかは分からない。通信事業は競争の激しい分野なので、こればかりは動向を見守って行くしかないだろう。

 

hb.afl.rakuten.co.jp

 

これから楽天経済圏に参入したいけど悩んでいるという人に楽天カード(通常カード)を勧めて来た理由は、年会費が無料で100円につき1ポイントもの還元が受けられるからだ。また、楽天関連サービスも充実していて、まだまだポイントアッププログラムの対象とされているものは多い。依然として他社の追随を許さない構えだ。

 

今日は楽天経済圏について触れてみた。

いつもの経済の話とは違って、個人のお金の貯め方や使い方にフォーカスした内容になっていたと思う。

 

このコーナーでは、今後も楽しく読めて役立つお金の話をしていくつもりなので見逃さないで欲しい。

 

それでは、また次の記事で。

MMT(現代貨幣理論)補足 後編

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ヒカリの学習ノートにようこそ。

今日の内容もMMT(現代貨幣理論)の補足説明だ。

日本と海外の学派ではしばしば主張が食い違うため、両者が立場を異にすることが時々指摘されている。ここでは何故そのようなことが起きているのかについて解説して行く。

 

まだ過去の記事を読んでいないという人には、以下の内容を参考にして欲しい。

 

hikari-note.hatenablog.com

 

hikari-note.hatenablog.com

 

過去の記事では政府による国債発行の仕組みや財政出動による公共投資とその有用性について説明することで、いわゆる「国(政府)の借金」と言われているものが問題ではないことを簡潔に説明してきた。

ここまで学んできたなら察しがついていると思うが、将来世代へのツケどころか、後進が安心して生活できるように安全な国土を築き上げるためには不可欠な政策なのだということが理解できているはずだ。

 

とはいえこれは日本MMTでの話だ。誤解を恐れずに言うと、そもそも本家、海外MMT(日本MMTと根底となる理論は近いが政治的思想が異なる)では、積極的な公共投資はあまり推奨していないし、インフレ率に応じた増・減税も奨めていないんだ。理由の一つとしては企業に事業を発注したとしても、その資金がどの程度労働者に行き渡るか分からないからだ。最悪の場合、スタグフレーションを引き起こして逆効果となり兼ねないと考えられている。そこで海外MMTでは財政出動ではなくJGP(Job Guarantee Program)という就業保証プログラムを提唱している。例えば、現在のような低インフレで景気が後退した状況下であれば、政府が低賃金で無制限に雇用を提供することで失業率の上昇を抑える。景気回復までの間の収入源を作ってあげることで購買力の低下を防いでしまおうというものだ。政府による社会保障の一つと捉えることもできるだろう。JGPの利用者は、後に景気が回復したらより良い条件の企業に各自就職すれば良いということになる。

 

JGPについては悪い提案ではないので、もちろん日本のMMT学派も否定はしていないのだけど、それに加えて公共投資も推奨しているんだ。海外MMT学派からしたら、そこが気に入らないのだろう。先に政治思想的な違いがあることは括弧書きで補足してあるけど、具体的に説明すると、本家MMT学派のステファニー・ケルトン教授やビル・ミッチェル教授は共産主義者であるのに対して、日本MMT(京都学派)を率いる藤井教授や中野先生、三橋先生は保守派だ。理論に共通部分があったとしても、一つでも異なる部分があれば排斥する、そのような左派特有の頑な思考が日本学派を遠ざけているとも噂されている。よって、現在両学派の間には亀裂が入っているため、距離を置いているのが現状なんだ。

 

話を戻そう。日本のMMTが公共投資を推奨していることについては、景気回復の理由もあるんだけど、それ以外にも国土の性質上避けられない理由があるんだ。何故なら、我が国のような災害の多い土地では、国民の生活と命を守るためにもインフラ設備や防波堤の工事など、国が積極的に財政出動して構築していく必要があるからだ。経済を立て直す以前に災害によって人的資源と供給力を棄損してしまったら元も子もないからね。

過去の記事でもMMTの視点から、しばしば積極財政やインフレ目標達成後の増税を一つの解決策として提示してきたんだけど、それはひとえに日本的MMTの視点に立っているためだ。人間の身体が一人ひとり異なるように、経済も国ごとに異なる。対症療法を施す上で患者ごとに投薬の量や種類が違うように、経済政策もまた、その国に適したものでなければならない。有り難い他国の学説を完コピして使い回せば良いという簡単な話のわけがないんだ。本家MMTと日本のMMT(京都学派)が袖を分つことになってしまったと聞いても驚かなかったのは、政治思想だけでなく置かれている状況が異なっているからだ。異なる国で異なる学者がそれぞれ個別に発展させてきた理論に一部共通点を見出したに過ぎない。

 

例えば、本家MMTとの共通点としては「貨幣はものではなく債務債権の記録である」ということが言える。去年辺りから本家が日本学派を破門した云々言われているけど、政治思想はともかく、両者が商品貨幣論を否定しているところは一致しているんだ。とはいえこれは単なる貨幣の実態を知っているというだけのことで、理論の共通点というほどのものではないのかも知れない。

 

日本は長引くデフレを金融政策以外の方法で脱出し、経済を立て直すことを目指さなければならなかった。その上で、現状最も有効と思われるMMTを一つの治療方法と捉え、日本風にアレンジしていると考えることもできるだろう。大体、海外MMTでは公共投資を推奨していないのだから、そのまま受け入れたところで災害大国では使いものにならないのだから。

本場の理論と異なるから分かってない、偽物だという指摘が筋違いであることをここで説明させてもらった。

 

米国でもまだ論争の最中であるのだし、何が本当に有効な手段なのかは誰にも分からない。だからと言ってこのまま放置していて良いのだろうか?過去と同じ政策を繰り返すだけでいずれ解決する問題なのだろうか?賛否はともかくとしても、現状を打破するためには先へ進まなければならない。ただ闇雲に、暗闇の中を手探りで進んでいても道に迷うことがあるだろう。そんなとき、一つの標にできるようにMMTを持っておいて欲しい。

 

今回は日本MMTと本家MMTの違いについて説明してみた。何故両者が異なるのか、単に日本の理論が偽物だからなのかと疑問を持っていた人には参考になったと思う。気になった人は、過去の記事を読むか別途調べてみるかして欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。

MMT(現代貨幣理論)補足 前編

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ヒカリの学習ノートにようこそ。

 

今日はカテゴリー「経済」で投稿した記事「MMT(現代貨幣理論)を知る」に関する補足説明の前編だ。

 

hikari-note.hatenablog.com

 

前の記事では国債発行と財政出動の仕組みを簡単に解説することで、いわゆる国(政府)の借金と言われているものが懸念事項ではないこと、景気の回復への後押しこそ優先するべきことだと伝えてきたんだけど、そもそもMMTと対極を成す主流派の貨幣論との比較をしていなかったので、何がどう違うのか分からないという読者も多かったと思うんだ。そんな疑問に応えるべく、今日から2回に分けて、主流派とMMT派の貨幣感の違いや日本と海外のMMTの違いについて説明して行くよ。

 

先ずは、主流派と呼ばれている従来の貨幣論と現代貨幣理論(MMT)の違いについて話して行こうか。

 

 

商品貨幣論(お金そのものに価値がある)

 

みんなは映画やアニメで中世ヨーロッパが舞台の作品を見たことがあるだろうか。その中では金貨や銀貨で取引している場面が出て来るよね。当時は金や銀というそれ自体に価値がある通貨を用いて取引されていたんだ。だから、財源には限りがあるし、領民から徴収した税を用いて領主は所有地を維持し、自らの生活を向上させてきた。時には金の含有量が少ない粗悪な金貨まで出回ることがあった。まさに、お金そのものに価値のある「物」だったんだ、

 

これこそが、従来の貨幣感である主流派の「商品貨幣論」だ。恐らく、現代人の多くが今でもこの貨幣論を信じていると思う。何故なら、財源が税金だと信じている人が大多数だからだ。未だに公務員の給料や社会保障費は『私たちの税金』で賄われていると考えているからだよ。つまり、財源は有限であって、赤字のときはより多くの税金を徴収しなければいけないという結論に至ってしまう。根底にある理屈は貨幣登場以前の物々交換による取引から来ているのだろう。要は、みんなが「価値がある」と信じている、替えの利かない有限の資源、つまり「金(きん)」と同一視しているんだ。そんな中世の貨幣感である「金本位制」が常識として染みついているからなのか一昔前には「埋蔵金」なんて言葉が出て来た時期もあった。これは霞が関埋蔵金(政府会計の話)のことで、徳川の埋蔵金とは関係ないんだけど、仮に徳川改造金の話と勘違いした人がいたとしても笑い飛ばすことはできないよ。結局、どちらも財源は税金であり、お金は有限なものだと考えているのだから、根底にある貨幣論は同じなんだ。お金を物だと考えていると言う点では変わらないよ。

 

国定信用貨幣論(お金とは国が価値を与えたもの)

 

一方MMTでは、お金はあくまでも国が価値を与えたに過ぎず、紙幣や硬貨(銅や青銅、白銅、ニッケル黄銅)という「物」はお金の価値を保存するための容器に過ぎないと見ているんだ。日本なら日本円、米国ならドルのように、国ごとに発行した通貨が価値あるものとして流通し、国民の間で共通して使われている理由は、その国で生活するためには税金を納めなければならないからだ。税金を納めなければ逮捕されてしまうから、仕方なく我々は日本円を使っている。仮想通貨(暗号通貨)が日本円に取って代わられることがないと言い切れるのは、日本円以外での納税を国が認めていないからだ。各国が納税を強制することによって、稼ぐために労働力が生まれ、より多くの富を有する者が他者を使うことができる。生活するためには労働して給料をもらわなければいけないわけだけど、累進課税によって稼ぐほどに吸い上げられるよね。これはマネ―ストック(世の中に出回っているお金)の量を調整することが目的なんだ。国定信用貨幣論が租税貨幣論とも言われている理由はそのためだよ。

納税を強制することによってその国の通貨に価値が生まれるのであって、徴税しないと財源が確保できないということではない。だけどそれを公にしてしまうと納税の意味に疑問を持つ人も出て来るだろうし、国としては生産力を上げたいわけだから、頑張って労働してもらわないことには困る。だからあまり大っぴらに「税金は財源ではありません」なんて言えないのかもしれない。みんなが貨幣論に興味を持って学ぶわけではないから、後々誤解が生じてややこしいことになり兼ねないからね。

 

ここまで聞いて、結局どちらも「お金に価値があるとみんなが信じている」だけじゃないかと思うかも知れないけど「商品貨幣論」では兌換性が前提とされていて、お金とは世界中の人間が共通の価値として認識している「金(きん)」と交換できる価値があると考えているのに対し「国定信用貨幣論」では、国が価値を保障しているから信用しているだけだ。更に、自国通貨で納税しないと逮捕さてしまうからお金を求めているのであって、お金そのものには「金」のような希少性はない。何故ならいくらでも発行できものだからね。

 

財政的制約はないが実物的制約はある(お金はいくらでも発行できるけど需要を満たすだけの資源や供給力が足りない)

 

こういうことを言うと必ずというほど「だったら50京円ぐらい発行して太平洋や日本海を埋め立てて国土を拡張してみせろよ」と極端な例を出してくる人がいるんだ。専門家でさえこんな反論をしているんだけど、はっきり言って不可能だよ。お金は数字としてなら1京円でも1垓円でもいくらでも発行できるけど、仮に太平洋埋め立て工事を政府が発注するとして、その資源や労働力が足りないよね。財源はともかく、労働力は有限なのだから、50京円もの需要を満たすだけの供給ができないんだよ。MMTが財源は有限ではないけど供給力には限り上がると主張しているのはそういうことなんだ。このことを「財政的制約はないが実物的制約はある」なんて言ったりしている。尚、MMTは赤字を軽視なんてしていないし、どの部分の、どの程度の赤字がインフレ率に影響するのかを気にかけているし、核戦争の勃発や大規模な災害で人的、物的に供給力が徹底的に棄損されてしまったならばハイパーインフレになるだろうことも認めているよ。この場合、先に上げた「財政的制約はないが実物的制約はある」がまさしく当てはまることになる。想像してみて欲しい、もしみんながストーンワールド(「Dr.STONE」稲垣理一郎/原作 Boichi/作画)みたいな文明の崩壊した世界でいくらお金を持っていても衣食住、何一つ確保できないだろう?お金の価値を支えているものが資源や労働力といった供給能力であるとはどういうことなのか、少し考えれば誰にでも分かることだろう。

 

国債を発行し過ぎると日本円の価値が下がる?

 

みんなが財政赤字を心配していて、将来世代へのツケを残すことになると信じているのなら「商品貨幣論」の立場にあるということになる。日本円の信用がなくなってヤバいというのは、私たちの日本円に対する信頼が揺らいで価値が下がると考えているからだ。だけど、先に説明した「国定信用貨幣論」の立場に立つと、この理屈は有り得ない。そのそも、価値が下がろうと何だろうと、税金を払わなければいけないのだし、日本で生活する上では嫌でも日本円を使わなければいけない。私たちが信用しようとしまいと関係ないことになる。日本国が円に価値を与え、納税は円で行うように強制している限りは信用が揺らぐことはない。それでも日本円が信用できないのなら保有金融資産を全てドルにでも替えれば良いだろう。そして日常生活ではドルを使い、納税もドルにしてみたら良いよ。「国定信用貨幣論」を否定するということは、そういう生活ができると断言するようなものだ。あと、海外の投資家が国債を大量に売ったらどうするんだと言われるけど、それなら円を発行して買い取れば良いだけだ。どれだけの規模の投資家であっても、一国の貨幣発行能力を上回るほどの資産を保有しているわけがない。

 

将来世代へのツケと懸念されている国債残高は、市場に供給したマネ―ストックの量を数値として記録したものに過ぎないんだ。統合政府(親子関係)である政府と日銀の間での貸し借りが原因で破綻するなどあり得ないことだということが分かるはずだ。国債金利の取り扱いやバランスシート上の問題については別の記事を参照して欲しい。

 

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高額納税者が偉いのだ!「財政均衡主義」

 

ここまで説明してきたけど、依然として多額の納税をした人が国に貢献しているという考えは人々の間に根強く残っている。これは、先に説明した「統合政府」を知らないからだろう。要するに、政府と日銀は別もので、政府には通貨発行権がない、だから財源を確保するためには国民からの税金が必要なんだという考え方だ。赤字は許されない、血税を大事に運用しなければならないというのが「財政均衡主義」だ。

確かに、資本主義社会に於いて雇用を創出している起業家の存在は大きい。研究、開発資金を確保して医療、科学の発展や技術革新をもたらしている企業の存在も国にとっては貴重だ。しかし、個人が大きく稼いで税金を吸い上げられていることと国の財源確保とは一切関係がない。医療や農業・漁業・林業・工業、通信、テクノロジー関連や交通、運輸のような私たちの生活に不可欠な労働と生産活動は存在しなければならないが、生きていく上で必ずしも必要ではないもので勝手にマネ―ストックを自分の懐に掻き集めて、貨幣流通量の調整のために税金を吸い上げられているとしてもそれは仕方のないことだし、国のために貢献しているという考えにも違和感がある。ひろゆき氏が言うように「生活に不必要なもの」あるいは「生存するために必ずしも必要ではないもの」ほど儲かる仕組みなのだ。身近な例で考えれば察しが付くものは多いだろう。ちなみに、映画「インターステラ」の世界では娯楽の一つであるプロ野球が廃止されている。

 

何度も言うが稼いだ分を吸い上げられるのは貨幣供給量の調整上仕方のないことなんだ。乱暴な言い方をすると、吸い上げられるのが嫌ならたくさん稼がなければ良いことになる。しかし、私たちの生活をより充実させ、文化を発展させるためには娯楽も必要だし、稼ぐ意欲が削がれると技術革新も起こらなくなってしまう。こんなにも便利な世の中になったのは誰かが得するからなんだ。そうでなければスマホは誕生しなかっただろう。単純に文字と音声で連絡が取れてネットが閲覧できるだけで良いのならガラケーで十分だったはずだ。人間の欲深さは発展をもたらすのだと筆者は考えている。それを思うと納税額の調整は難しい課題ではある。

 

とはいえ税金は財源ではないし、財政の目的が経済を安定させるためのものであることは揺るがない。以上の理由からも政府の赤字云々は関係ないのだというのがMMTの主張する「機能的財政論」であり「財政均衡主義」とは対極を成すスタンスなんだ。何度も言うが、依然として「財政均衡主義」で経済を捉える人が大多数であり、今後も変わることはないだろう。現代に於いて税金が財源ではないのだと主張することは、16世紀に地動説を唱えるようなものだ。異端者とみなされることは避けられない。

 

国も企業や個人と同じくマネーゲームの参加者なのか?

 

ここまで説明してきたように今尚根強く支持されている「財政均衡主義」の立場では財源は税金であり、有限なものであると考えられており、私たちはその価値観を基礎として政治的な判断を下してきた。国には自由に通貨を発行する権限はなく、企業や我々個人と同様にマネーゲームに参加するプレイヤーの一人に過ぎない。だから、競争に敗れた選手が失業しても致し方がないという結論になってしまうんだ。しかし、実際には日本政府と日銀は統合政府であり、必要に応じて財源を確保することができることは既に述べた通りだ。国は立法から徴税に至るまで、マネーゲームのルールを作り、補足し、時として管理、審判することができるゲームマスターのような存在である。だったら、運営者の役割から企業や個人の危機の際には介入して救済してやることもできるだろう。MMTが「国定信用貨幣論」の立場から主張しているのはこういうことなんだ。

 

中央銀行の介入でお金の供給量を増やす「外生的貨幣供給論」は無意味?

 

マネーゲームのプレイヤーである企業や国民が苦戦しているのであれば、ゲームマスターが介入してやれば良いとは言ったけど、中央銀行による金融緩和にはどの程度の効果があるのかについては非常に疑問だ。銀行が保有する国債を日銀が買い受けて、日銀当座預金を増やしてやることはできるよ。これは買いオペとして知られているんだけど、要するに中央銀行が外側から介入して貨幣を供給してあげれば後は勝手に企業が融資を受けるだろうという考えだ。このことを「外生的貨幣供給論」と言い、主流派の経済学が採用してきた方法だ。金利を低くすれば借りやすくなるだろ、あとは設備投資でもなんでもしてくれ、と。でもね、デフレで需要が落ち込んでいるときに設備投資したがる企業がどれぐらいあるのだろう。それを言っているのがMMTの「内生的貨幣供給論」なんだ。起業や国民がお金を借りたいと思えるような社会情勢にないのであれば、どれだけ銀行の貨幣供給量を増やしたところで借りる人はいないだろうという主張だ。だからこそ、まずは政府が率先して需要を作ってあげて、企業の設備投資と雇用を促進してあげようじゃないかと言っているんだ。日本のような災害国であれば公共事業で国民の命を守ることもできる。この辺は、公共投資に否定的な本家MMTとは異なるところなんだけど、その話はまた後編で触れたいと思う。

 

補足のつもりで書いた記事なのに長くなってしまった。

ここまで読んでくれてありがとう。次回はもう少し短くなると思うから、せっかくなのでまた読んでみて欲しい。

 

それでは、また次回の記事で。