ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

お金はどうやって生まれるの?「通貨発行益」の仕組み(前編)

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ヒカリの学習ノートにようこそ。今日はタイトルにもある通り、私たちが日々の生活の中で使っている“お金”というものがどうやって生み出されているのかについて説明していくよ。

今回この話を選んだ理由は、あるとき筆者が目にした「1万円札1枚の原価はたったの22円です!(ドーンッ)」みたいな呟きがバズっていたからなんだ。何がそんなにウケたのか分からないんだけど、これってつまり「この借用証書1枚の値段はたったの22円です!(ドーンッ)」って呟いたのと本質的には何も変わらないんだ。だって、1万円札っていうのはそもそも日銀が発行している借用証書だからね。

※1万円札の製造原価はおよそ22~24円の幅で増減する

そのことも踏まえて、今日は「お金はどうやって生まれるの?」と題して、お金を生み出すことで政府や日銀が得ている利益「通貨発行益」について話していきたいと思う。

今の高校では政治経済の授業で「信用創造」を学んでいると思うんだけど、そこで勉強する内容っていうのは市中銀行(民間銀行)がお金を生み出す仕組みのことだよね。ここで説明するのは政府や中央銀行(日本銀行)がお金を作り出す過程の話だから、混同しないようにして欲しいんだ。

確かに市中銀行も信用創造によって預金(銀行にとっての負債)という通貨を生み出すことはできるんだけど、これはお客様から要求があれば直ちに現金という形で返済しなければいけないものだから、いつまでも自行の口座に眠っているわけではないし、もしかしたら他行に渡ってしまうかも知れない。しかも、市中銀行には現金を発行する権利がないんだ(あくまでも預金という通貨の発行権があるだけだ)。つまり、貸出金の回収が滞って不良債権化してしまえば、最悪破綻の恐れもある。一方で、日銀には負債の心配はない。理由はいろいろと言われているんだけど、取り敢えず今の段階では、お金を発行することによって得られる「通貨発行益」があるからだという理解に留めておいて良いだろう。

では、通貨を発行することによって日銀はどのように利益を得ているのだろうか。

以下でそのことについて詳しく説明していくから、よく聞いて欲しい。

一般に考えられている「通貨発行益」とは、恐らく日本政府が発行する硬貨(10円玉や100円玉など)のことだと思うんだ。その場合は造幣局が製造する。その後、日銀に持ち込んで発行することで政府の資産になるんだ。ちなみに100円玉の製造原価は15.3円と言われているから、1枚発行する毎に政府の儲けは84.7円ずつ増えていくことになる。

ここまでは特に難しい話ではないよね?

これは覚えなくても良いんだけど、一応、通貨発行益のことを「シニョリッジ」なんて呼んだりもするよ。

さて、ここからみんなも大好きな紙幣(特に高額紙幣の1万円札が思い浮かぶかも)の話になるわけなんだけど、硬貨とは違って少々ややこしくなってくるよ。

紙幣の場合はね、日本銀行が国立印刷局ってところで先ずは印刷させるんだ。その後日銀に納入させるんだけど、この時点ではまだお金と呼べる代物ではないんだ。では、いつその紙切れに命が吹き込まれるのだろう。それはね、市中銀行(民間銀行)が日銀当座預金(金融機関が日銀に持っている当座預金)から引き出したときなんだ。この瞬間にはじめてこの紙切れにお金としての価値が載せられることになるんだ。

この1万円札を作るのにかかる製造原価が、つぶやきにもあったように1枚当たりたったの22円(数円程度の変動はある)だ。

この時の日銀の儲けは9,978円になる。たったの22円で1万円札が作れるなんて夢のようだと思うかな?

だったらその製造原価すら必要ない方法だってあるよ。例えば日銀当座預金を1万円分増やしてしまえばただの「信用創造」つまり情報を書き足したに過ぎないのだから、最早原価すら必要ないわけだ。丸々1万円が日銀の儲けとなる。

いずれにしても日銀は1万円、あるいは製造原価を除いた9,978円の通貨発行益を手に入れることになる。

…と、一般的には解されているらしい。

申し訳ないのだけど、ここからが本題なんだ。

先のような解釈で理解してしまっても構わないんだけど、それだと実際の紙幣発行の意味を知らないまま終わってしまう。大切なのは、政府が発行する硬貨と日銀が発行する紙幣には大きな違いがあるということを理解することだ。

もう一度言うけど、政府が硬貨(10円玉や100円玉など)を作ればそのまま原価を除いた額が政府の資産になる。

硬貨の額面 ― 製造原価 = 通貨発行益

単純明快、しかも非常に効率が良い。

一方、日銀が作ることのできる紙幣や日銀当座預金というものは、実は日銀にとっては資産どころか負債という形になってしまうんだ。

いったいどういうことだろう…?

さて、この事実を踏まえた上で、次回は日銀が「通貨発行益」を得る仕組みについて説明していくよ。

それでは、また。