ヒカリの学習ノート

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MMT(現代貨幣理論)補足 後編

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ヒカリの学習ノートにようこそ。

今日の内容もMMT(現代貨幣理論)の補足説明だ。

日本と海外の学派ではしばしば主張が食い違うため、両者が立場を異にすることが時々指摘されている。ここでは何故そのようなことが起きているのかについて解説して行く。

 

まだ過去の記事を読んでいないという人には、以下の内容を参考にして欲しい。

 

hikari-note.hatenablog.com

 

hikari-note.hatenablog.com

 

過去の記事では政府による国債発行の仕組みや財政出動による公共投資とその有用性について説明することで、いわゆる「国(政府)の借金」と言われているものが問題ではないことを簡潔に説明してきた。

ここまで学んできたなら察しがついていると思うが、将来世代へのツケどころか、後進が安心して生活できるように安全な国土を築き上げるためには不可欠な政策なのだということが理解できているはずだ。

 

とはいえこれは日本MMTでの話だ。誤解を恐れずに言うと、そもそも本家、海外MMT(日本MMTと根底となる理論は近いが政治的思想が異なる)では、積極的な公共投資はあまり推奨していないし、インフレ率に応じた増・減税も奨めていないんだ。理由の一つとしては企業に事業を発注したとしても、その資金がどの程度労働者に行き渡るか分からないからだ。最悪の場合、スタグフレーションを引き起こして逆効果となり兼ねないと考えられている。そこで海外MMTでは財政出動ではなくJGP(Job Guarantee Program)という就業保証プログラムを提唱している。例えば、現在のような低インフレで景気が後退した状況下であれば、政府が低賃金で無制限に雇用を提供することで失業率の上昇を抑える。景気回復までの間の収入源を作ってあげることで購買力の低下を防いでしまおうというものだ。政府による社会保障の一つと捉えることもできるだろう。JGPの利用者は、後に景気が回復したらより良い条件の企業に各自就職すれば良いということになる。

 

JGPについては悪い提案ではないので、もちろん日本のMMT学派も否定はしていないのだけど、それに加えて公共投資も推奨しているんだ。海外MMT学派からしたら、そこが気に入らないのだろう。先に政治思想的な違いがあることは括弧書きで補足してあるけど、具体的に説明すると、本家MMT学派のステファニー・ケルトン教授やビル・ミッチェル教授は共産主義者であるのに対して、日本MMT(京都学派)を率いる藤井教授や中野先生、三橋先生は保守派だ。理論に共通部分があったとしても、一つでも異なる部分があれば排斥する、そのような左派特有の頑な思考が日本学派を遠ざけているとも噂されている。よって、現在両学派の間には亀裂が入っているため、距離を置いているのが現状なんだ。

 

話を戻そう。日本のMMTが公共投資を推奨していることについては、景気回復の理由もあるんだけど、それ以外にも国土の性質上避けられない理由があるんだ。何故なら、我が国のような災害の多い土地では、国民の生活と命を守るためにもインフラ設備や防波堤の工事など、国が積極的に財政出動して構築していく必要があるからだ。経済を立て直す以前に災害によって人的資源と供給力を棄損してしまったら元も子もないからね。

過去の記事でもMMTの視点から、しばしば積極財政やインフレ目標達成後の増税を一つの解決策として提示してきたんだけど、それはひとえに日本的MMTの視点に立っているためだ。人間の身体が一人ひとり異なるように、経済も国ごとに異なる。対症療法を施す上で患者ごとに投薬の量や種類が違うように、経済政策もまた、その国に適したものでなければならない。有り難い他国の学説を完コピして使い回せば良いという簡単な話のわけがないんだ。本家MMTと日本のMMT(京都学派)が袖を分つことになってしまったと聞いても驚かなかったのは、政治思想だけでなく置かれている状況が異なっているからだ。異なる国で異なる学者がそれぞれ個別に発展させてきた理論に一部共通点を見出したに過ぎない。

 

例えば、本家MMTとの共通点としては「貨幣はものではなく債務債権の記録である」ということが言える。去年辺りから本家が日本学派を破門した云々言われているけど、政治思想はともかく、両者が商品貨幣論を否定しているところは一致しているんだ。とはいえこれは単なる貨幣の実態を知っているというだけのことで、理論の共通点というほどのものではないのかも知れない。

 

日本は長引くデフレを金融政策以外の方法で脱出し、経済を立て直すことを目指さなければならなかった。その上で、現状最も有効と思われるMMTを一つの治療方法と捉え、日本風にアレンジしていると考えることもできるだろう。大体、海外MMTでは公共投資を推奨していないのだから、そのまま受け入れたところで災害大国では使いものにならないのだから。

本場の理論と異なるから分かってない、偽物だという指摘が筋違いであることをここで説明させてもらった。

 

米国でもまだ論争の最中であるのだし、何が本当に有効な手段なのかは誰にも分からない。だからと言ってこのまま放置していて良いのだろうか?過去と同じ政策を繰り返すだけでいずれ解決する問題なのだろうか?賛否はともかくとしても、現状を打破するためには先へ進まなければならない。ただ闇雲に、暗闇の中を手探りで進んでいても道に迷うことがあるだろう。そんなとき、一つの標にできるようにMMTを持っておいて欲しい。

 

今回は日本MMTと本家MMTの違いについて説明してみた。何故両者が異なるのか、単に日本の理論が偽物だからなのかと疑問を持っていた人には参考になったと思う。気になった人は、過去の記事を読むか別途調べてみるかして欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。