ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

多額の借金から逃れる方法と注意点、今後の法改正等

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かつて法律職界隈で「クレサラ」案件が盛り上がりを見せていたことは筆者の記憶の中では新しい。今でもたまに「過払い金請求」の宣伝を目にするけど、既にほとんどの債務者が回収してしまっているからこの案件で儲けるのは難しいのではないだろうか。

2000年代初頭にはヤミ金問題が大々的に取り上げられて、法改正も行われた。それに伴う被害者救済の破産手続きなどで、当時は弁護士だけでなく司法書士に相談する人も多かっただろう。

そんなわけで今日の話題は借金返済回避についてだ。一応ここではお金に関連する話を行って行くので、債務の取り扱いについても守備範囲内ということになる。実例を基に、特に低所得の債務者が注意するべきこと、取るべき回避策について話して行こうと思う。

 

 

金額は関係ない、大事なのは債務者であるあなたの資産状況

 

ひろゆき氏が「借金が1億だろうと1万円だろうと、返せないのであれば同じだ」という話をしていたことがあったんだけど、これは至極真っ当な見解だ。「こんな金額返せないから自殺するしかない」なんて判断は愚か以外の何物でもない。厳しいことを言うようだけど、そういう人は法治国家の仕組みを逆手にとって回避する手段を見出すこともできず、情弱であるがために命を捨てただけだ。

もちろん、あなたが高所得者であり、不動産や有価証券を持ち、それなりの預貯金を持っているのであれば話は別だ。債務整理を弁護士に依頼して債権者を説得して返済しない限りは現在の生活を維持していくことは難しいだろう。社会的地位のある人間であれば尚更強制執行は避けなければならない。返済を怠り、裁判所から強制執行の許可が下りれば、あなたの給料や所有財産は、動産、不動産を問わず生活必需品以外は差し押さえられることになる。給料に関しては職場に債権者から連絡が行くので、借金を抱えていることが仕事先にバレてしまうことになる。責任ある立場にある人にとっては傷跡を残す最悪な事態だろう。とはいえ、富裕層であっても家具や衣類、業務に用いる機材等は差し押さえの対象とはならない。あの堀江氏でさえ持って行かれたのは大型テレビと三味線だけだ。場合によってはそれさえも仕事で使う物であれば取り上げるのは難しい。大事なのは、自分がどのような立場にあるのかだ。もしあなたが安定した職に付いており、年収400万円を超える収入を得ているのであれば、ちょっと気を付けた方が良いかも知れない。

 

借金が会社にバレる? 高所得者ほど差し押さえを警戒しなければならない

 

冒頭で話したけど、借金額が1億円だろうと1万円だろうと、その人にとって支払えない金額なのであればどうすることもできない。債務者がこの先高所得者になる可能性があったり、既に動産、不動産で財産を所有しているのであれば、返済額に達するまで全て持って行かれることになるが、あなたに失うものがないのであれば取り立てようがない。

ここで、前の項目で話した年収400万円以上の人について言及していくことになる。「たった400万?」と思うのは早計だ。日本人の平均年収は440万円ほどとされているが中央値は240万円から450万円の間に納まると言われている。これが多いか少ないかはその人の家族構成や健康状態、日々の支出額によるんだけど、ここから更に所得税と都道府県税、市町村税で2割程度持って行かれて、さらに家賃やその他諸々の支払いに充てて生活費を残そうとすれば贅沢できないことぐらいは分かるだろう。年収1千万円の人でもそれほど裕福ではないと言われている理由はそこにある。参考までに、年収1千万円の人が実際に手に出来る金額(手取り)は800万円に届かないことを確認しておこう。高所得者は住宅ローンや家族間の付き合い、会社関係者の冠婚葬祭、子供の教育費でかなりの出費が見込まれる。多くの人が想像しているような富裕な生活は難しいことが分かるだろう。

 

とはいえ、仮にあなたが『高額所得者に見えるかもしれないけど実際には税金や保険料の支払いで生活が苦しいんだ!』と説明したところで債権者にとっては知ったことではない、借金を滞納している場合には月収の1/4(子供の養育費は1/2)が毎月の給料から差し押さえられることになる。たった4分の1かと安堵した人は注意して欲しいんだけど、これは月あたりの手取りが44万円以下の債務者を対象にした差し押さえ金額の計算方法だ。あなたの毎月の手取りが45万円以上なのであれば、33万円を超えた分は全額持って行かれてしまう。仮に手取りが50万円なのであれば、17万円が差し押さえられることになる。1/4の12万5千円とはならないんだ。稼げば稼ぐほど持って行かれるのだから、最悪、一生借金返済のためだけに働き続けることになる。そういう人は素直に破産するべきなんだけど、経歴に傷がなく、安定職に付いている人こそ躊躇しがちだ。こういうところで社会的強者は追い詰められる。どうしても差し押さえられたくないのであれば破産手続きに踏み切っても良いけど、高所得者の場合は債務額によっては免責許可が下りるかどうかも分からない。一時的に強制執行を中止させることができるんだけど、給与からの差し押さえ予定額は勤務先に保管されることになる。つまり、判決が出るまでの間は1/4(または33万円を超えた分)を差し引かれた手取りとなってしまうんだ。こうしてみると、立場があって収入の大きな人間ほど難しい立場に追い詰められることが分かるだろう。逆に持たざる者は何も気にしなくて良い。最初に話したように、債務額が1万円だろうが1億だろうが関係ない。消費者金融から借りながら生活しているような人の動産に差し押さえの価値なんてないだろうし、不動産や有価証券もないだろう。あったとしても既に手放しているのではないだろうか。家電だって堀江氏のような高額な大型テレビならともかく、二束三文にもならないジェネリック家電なんて回収したところで手続に要した費用の方が高額だろう。パソコンも仕事に使うものであれば差し押さえられないし、そもそも今時は発売後間もないパソコンであっても買取店に持ち込んだところで1万円にもならないというのが現実だ。自動車に関しても、査定金額が20万円に満たない場合は差し押さえられない。貴金属や高級腕時計、陶芸品、不動産以外でまともな価値のある物なんてそう多くは存在しない。法律が変わったと言うのもあるんだけど、身ぐるみ剥がして債権を回収していた戦前とは物の価値がまるで違うんだよ。訴訟を起こす場合も同様のことがいえる。被告になる相手に社会的地位も財産もないのであれば無視されて終わりだろう。それかリテラシーの無い人間を一時的に怯えさせるぐらいの効果しか期待できない。訴える場合も相手がどういう存在なのかをしっかりと確認しないと時間と費用の無駄になる。

 

債権者泣かせの「無敵の人」は存在するのか?

 

あなたがもし多額の債務を抱えていたとして、そこから逃れるにはどうしたら良いのかについては、先に説明した通り各々の社会的立ち位置によって異なる。もしあなたが高学歴で新卒から大手企業に勤務している、あるいは公務員として安定した収入を得ているのであれば、今の生活を失わないためにも早めに弁護士に相談して任意整理をするべきだろう。債務額にもよるけど、素直に完済する以外の選択肢は見つけにくい。妻子持ちの人であれば更に選択の幅が狭くなってくるだろう。借金を理由に関係がこじれて離婚した場合、更に養育費の支払い義務を負うことになる。これに関してはそれこそ命を断つ以外に逃れる手段はないし、滞納している場合は手取りの1/2が差し押さえの対象になるという極めて厳しい状況に追い込まれることになる。一生資産の形成ができなくなるし、経済的自由なんて手にする未来は訪れないだろう。

では、サブタイトルにある「無敵の人」とはどんな存在なのだろうか。ここまで話してきたらもう分かるだろう。社会的地位のある人間とは間逆の人だ。安定職についておらず、価値のある動産もなく、不動産も有価証券も預貯金もまともに所持していない人間だ。こういう債務者が一番厄介だし、はっきり言って債権者側の弁護士にはなりたくない。損をすること覚悟で強制執行をかけたとしても、所持している現金が66万円以下であれば取り上げることができない。消費者金融から借り入れてその日暮らしをしているような人に一括返済を迫って裁判所命令が出たとしても、こういう人が67万円以上の現金を持っているのかと言われると大いに疑問だ。預金残額も極めて小額かゼロに近いだろう。その上、動産も不動産も持っていないとなれば、あとは給料の差し押さえしかできない。ここで債務者側の視点から注意したいのは、どれだけ低所得でも1/4(養育費は1/2)は差し押さえられてしまうということだ。仮に10万円しか手取りがないとしても、しっかり2万5千円を持って行かれることになる。そうなると7万5千円しか手元に残らないから、最低限の生活すら厳しい状況になるだろう。そのような場合には「差押え禁止範囲」を拡張してもらうように裁判所に申し立てを行うことになる。

 

ここまで話すと、結局「無敵の人」は存在しないんじゃないかと思うかも知れないけど、そんなことはない。何をどうやっても差し押さえ不可能な収入がある。それは生活保護費だ。これは生活保護法第58条及び59条の「差押・譲渡禁止」の根拠に基づき、一切の取り立てができなくなくなっている。債務者側の弁護士は各債権者にその旨通達した上で債権を放棄してもらうか破産手続きをすることになる。同時廃止となれば強制執行も中止され、どの道債権回収を遂行できなくなる。しかし、債権者側が債務者の収入を受け取る銀行口座を知っている場合には少々厄介なことになる。差し押さえ禁止財産ではあるのだが、一度相手の手に渡ってしまうと取り戻すのに手間がかかってしまう。債務者側は収入受取口座を速やかに変更するか手渡しで受け取るようにした方が安全だ。もちろん、早期に弁護士が関与して破産手続きを進めておけば債権者は手が出せなくなる。債務者側には口座変更と弁護士相談を同時に行うぐらいのスピード感は欲しいところだ。

 

国民健康保険や年金、税金は別格

 

一般的な債権の差し押さえ範囲については先に説明してきた通りだけど、税金の場合には範囲が異なってくる。債権者が私人の場合には督促状の送付や裁判といった手間がかかるんだけど、税金の場合には督促状の発行から10日以内に滞納額を完済しなければ給与や財産を差し押さえできることになる。かなり厳しいよね。そして差し押さえ禁止範囲は以下の通りだ。

 

・社会保険料や所得税、住民税等の給与の控除対象

・給与額から所得税や住民税、社会保険料を控除した額のうち20%

・毎月10万円

・同一生計に属する配偶者や子供等の親族一人当たり4万5千円

 

※国税徴収法第76条第1項及び施行令第34条参照

 

私人の場合が手取り(給与額から所得税や社会保険料等を差し引いた額)から3/4が差し押さえ禁止であったことを思うと、差し押さえ可能な範囲が広がっていることが分かると思う。ここでもやはり、所得の多い人ほど厳しい状況になる。

 

尚、年金の滞納の場合にも督促状の指定期限から10日以内の納付が必要だ。これを守らなかった場合には「差押予告通知」が発送されるが、この段階で既に差し押さえの準備が進められている。差し押さえの対象者は本人以外の連帯納付義務者、つまり世帯主や配偶者にまで及ぶから、納付額を賄うために本人以外の親族の財産まで取り上げられることになる。私人の債権者とは異なり、破産することもできない債務なので、逃れようがない。これに関してはどうしようもないので、支払えないのであれば低所得で困窮している者と同様に免除手続きをするなどの対応が必要だ。無視しておけば良いという問題ではないんだ。

強制徴収の対象者は年所得(控除後)300万円以上で、7か月以上滞納している者とされているので、結構当てはまる人は多いと思う(4万人近くが強制徴収の対象)。所得もちょうど中央値に当てはまるからね。

 

先に説明したように、どうしても経済的に支払いが難しいのであれば保険料免除制度を使ってみると良いよ。全額免除にしなくても、1/4、3/4免除や納付猶予制度がある。所得に制限もあるので、詳しい条件については日本年金機構に確認してみると良いだろう。

 

税金に関しては支払う以外に道はない。相談すれば分割納付も可能なので、早期に話し合っておいた方が良いだろう。養育費も逃れることができないが、それ以上に税務署の追求は厳しい。あなたの命が尽きるまで、一生、どこまでも追いまわされることになる。例え国外に逃げたとしても現地の税務当局に協力を要請して徴税を図るだろう。近い将来デジタル通貨が実現すれば容易に個人の資金移動を追跡することが出来るようになる。このような苦悩を一生涯抱えることがないように、税金や年金の問題だけは無視することなく真摯に対応することをお勧めする。

 

変わり行く法制度

 

結局、生活保護受給者のような法的に取り立てることが不可能な対象以外が賠償金や借金から逃げ果せることは不可能なのだろうか。これについては今後益々難しくなって行くだろうというのが正直な感想だ。それというのは過去にひろゆき氏が見事に莫大な損害賠償を回避して見せたからだ。あくまでも損害賠償の話なので借金回避とはまた違ってくるんだけど、所謂「無敵の人」であってもそう簡単には支払い義務から逃れられないということには変わりはない。10年間一切の支払いをせずに差し押さえもされないまま過ごすことができれば時効となるけど、それでは犯罪被害者が救済されないという問題もあったので、損害賠償請求に関しては今後より一層厳しい取り決めがなされる可能性がある。民事執行法の改正案によれば、裁判に出廷しない債務者を強制的に連行することや、罰金に加えて懲役刑も罰則に加え入れる案も出ているようだ。

正直なところ、筆者がその話を聞いたときには民事と刑事を取り違えているのではないかと疑問を持ったよ。罰金額の値上げならともかく、民事事件の解決のために懲役刑を加え入れるという提案は正気の沙汰ではない。民事解決のルールを根底から覆しかねない改正(改悪)案と言えよう。しかしながら、将来どのように法システムが再構築されていくのかについては未知数だ。犯罪被害者保護の観点からは、損害賠償を国が立て替えることで救済して、その後債務者に対して取り立てを行うという手段も提案されている。既にこの方法が実施されているノルウェーのように執行庁が日本にも設置されて、被害者救済が容易になる時代が来るのかも知れない。

 

今日は借金の返済から逃れる方法の話題から年金や損害賠償請求の現状についても踏み込んでみた。長くなってしまったけど、いざというときの参考にしてもらえたならうれしい。

 

それでは、また次の記事で。