ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

未来の仕事とお金 加速するテクノロジーの進化と向き合い方 後編

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前回に引き続き、現在予想されているテクノロジーの進化に目を向けながら、仕事とお金の在り方と向き合い方について見て行きたいと思う。

 

急速なテクノロジーの発展を肌で感じている現代人からすると、昨今のAI(人工知能)熱は信憑性があるように感じられる。しかし、歴史を振り返ればこれで3度目のブームだ。今回も一時的な熱狂で終わってしまうのか、それとも三度目の正直で、今度こそSFのような世界が実現するのか、今後の動向に注目したいところだ。

 

今日は、そんなAIの発展について、現実味を帯びている話を取り上げていく。自分たちの仕事やスキルと照らし合わせながら、新しいパートナーである人工知能との向き合い方について考えて行こう。

 

 

AI作家の登場で物書きの仕事から人間が解放される

 

 単純なライティングなら人工知能任せで良い

執筆のようなクリエイティブな仕事はAIに代替され難いと捉えられてきたが、どうやらその認識を改めるべきときがきたようだ。特に客観的事実と情報をまとめ上げる新聞記事の執筆は人工知能にとっては容易い作業だ。人間の記者を凌駕する速さで膨大な情報を理解し、原稿に落とし込むことができる。例えばAP通信社が執筆用の人工知能に経済記事を書かせたときには、データさえあれば瞬時に300文字前後の記事を生成させることができたという。ちなみに、人間の記者が3カ月で300本の記事を執筆するのに対してAIは4400本も書き上げるそうだ。もう勝ち目がないね。

 

 作家の仕事が効率化される

小説の執筆はさすがに不可能だと考えられてきたけど、既に人工知能にSF小説を書かせるプロジェクトが実施されている。当時ネット上では「ラノベ作家なんて廃業だな」と嘲笑う書き込みをいくつか見つけたんだけど、件の実験ではSF小説をAIに書かせているのであって“ライトノベル”に限定した話ではない。一般文芸は高尚だからAIには書けないと考えているのだとしたら相当見識が狭い。例えば、ジャンル毎に膨大な数の映画と脚本をAIに学ばせることで、新たな映画の企画書や脚本を仕上げることだって出来るようになるだろう。一般文芸も同様だ。こうなってくると、事実を整理してターゲットに情報を伝えることを目的とした新聞記事の場合、小説や脚本以上にAIに代替される可能性が高くなる。書き手や語り手の知名度で勝負しているコラムニストや評論家はある種の人気職なので生き残るかも知れないが、必ずしも独自の視点を必要としない記者やライターの仕事は早い段階で人の手を離れていくことだろう。そしていずれはより精度の高められたAIが既存の小説からパターンを学び、独自に物語を書けるようになる。ある程度型の決まったジャンルであれば数万、数十万という過去の小説からパターンを見出して、より洗練された原稿を書き上げることも不可能ではないだろう。

 

 著作権で稼げることに変わりはない

AI作家の登場は、物書きをただの金稼ぎの手段としか見ていない人にとっては痛手ではないだろう。むしろ面倒な執筆作業を肩代わりしてくれるのなら願ったりかなったりだ。先に例を挙げたようにネット上ではライトノベルやその作家を異様に毛嫌いする人間が珍しくないけど、そういう人たちは何か“高尚そうなもの”に漠然とした価値を見出しているのだろう。出版物の本質を見失っている。出版社にとってはいずれも「商品」に過ぎない。売れない、儲からない商品では、どんなに高尚であっても無価値だ。分かりやすい人気作を挙げるなら、ラノベではSAOこと「ソードアート・オンライン」の累計発行部数が2600万部(3000万に届くか?)、単行本1巻だけでも100万部を超えている。漫画「五等分の花嫁」が1500万部超えだ。いずれの人気作家も著作権で食べている。彼らがAIの助けを借りて執筆できるようになったらどうなるだろうか。過去の作品から新規のアイディアを後押ししてくれるだけでなく、原稿に落とし込む作業の一切を人工知能に任せることだってできる。そうなればあとは印税と版権使用料で稼ぐことが容易になるだろう。もちろん、私がAIを利用できたとしても、勝手に他人の著作物やアイディアから作品を作り出すことは難しい。同人誌の扱いがどうなるかは今のところ分からないけど、剽窃問題は今以上に複雑になり、訴訟案件も増えていくだろう。この辺は法整備の問題になってくるのでここでは深堀しない。

 

 変化に適応できる者が生き残る

結論を言うと割と早い段階で物書きの仕事も人の手を離れることになるんだけど、別に悲観することではない。小説を書きたい人は稼げるうちにヒット作でも出して、稼ぐだけ稼いだらAIに自分の過去作を学ばせて自動生成させて印税と版権使用料で儲けるということもできるだろう。これからの時代はAIを使う側に回る人間が有利になる。もちろん人工知能の設備を手に入れるのにも資金が必要だ。そういう意味でも先に上げた人気作家陣は存分に強みを発揮することができる。

作家AIの仕事は小説執筆だけではない。作詞や作曲でも力を発揮することだろう。例えば秋元康氏の過去の作品を学ばせてAIに秋元氏の作詞を再現させることも可能だろう。当然、この場合も著作権の問題があるので、この方法で作品発表出来るのは作詞家本人に限定される。結局、AIを使う側に回った人間が不労所得を得られるということだ。 

 

AIに任せられるその他の仕事

 

 物流が自動化される

Amazonに代表されるECサイトでの買い物が一般的となった現在では、わざわざ実店舗に足を運んで広い店内を歩き回り、店員に尋ねなくても検索と過去の閲覧履歴からおすすめ商品が提示され、難なく欲しい商品を手に入れられるようになった。書籍はもちろん、家電製品でさえ送料無料、しかも安く手に入る。在宅勤務の影響でウーバーイーツの注文も増えているという。便利な世の中だが、人間の労働力には限りがある。既にECサイトの商品発送に関するトラブルが多く、運送業に従事する労働者を気遣う書き込みがSNSでも目立つ。今やECサイトや運送業者側は悪者のように扱われているが、その問題も将来的には解消されるだろう。何故なら物流が自動化されるからだ。例えばAmazonはドローン配送で30分以内にユーザーに商品を届けることを目標に掲げている。倉庫を上空に設置して、直接顧客の家まで届けるという斬新なアイディアだ。日本での実現は当分先だろうけど、自動運転が実現すれば配送ドライバーは必要なくなる。ヤマト運輸が実証を行った「ロボネコヤマト」のサービスでは、お客が受け取り場所と時間をスマホで指定して受け取る方式を取っている。ドライバーは乗っているが、荷物は客が自分で取り出す。基本的にドライバーは関与しないというものだったので、自動運転への切り替えでドライバーを不要にしたのは必然だったのだろう。後に自動運転による実験も行われている。一方、倉庫でのピッキング作業は依然として機械には難易度が高く、まだまだ人手を必要としている。運転と配送業務から解放された人員を倉庫内作業に割くことになるだろう。これに関してもロボット工学の 発展でいずれは人の手を離れて完全自動化されることは間違いない。いずれにしてもこのような繊細な作業でさえも人の手を離れるのは時間の問題だ。

 

 通訳、翻訳業のAI代替化

これに関してはAI研究者だけでなく英語教育者も度々話題に出しているんだけど、他の代替可能な事務作業や接客業と単純に比較できるスキルではない。同時通訳の自動化については筆者の知る限りでも20年以上前から実験が行われていたし、通訳者の頭の中でどのように情報が処理されているのかも注目されてきた。そして現在では低価格で個人が高性能な通訳機を持てるようになった。ソースネクストの商品「POCKETALK(ポケトーク)」だ。言語の異なる者同士でも母国語を使ってコミュニケーションが取れる優れものだが、英語学習の補助機として使っている人もいる。Web翻訳も高性能化しているので、使用者に基本的な英語力があれば英作文や翻訳のサポートに使うこともできるが、学習用に活用する人が少なからずいるのも事実だ。テクノロジーの進化でもたらされた変化と言えば、現時点では語学学習の補助が可能になったことぐらいだろう。実際、国際会議でAI通訳に一任するまでには至っていない。これ以上精度が上がったとしても、人間にしか判断できない場面で臨機応変に通訳することは難しいだろう。ときには訳さないことも通訳者の仕事になるからだ。いつの日かSF作品で登場するような人の心を持ったAIが実現すれば、AI通訳に置き換わることはあるだろう。尤も、外見も内面も人に限りなく近く、更に人間以上の知能を持ったロボットが実現したときそのときには、ほぼ全ての仕事がAIに置き換えられていることだろう。

 

 危険な作業から解放される

多くの人がロボットに求める仕事はこれだろう。危険を伴う高所作業や除染作業などの人体に影響を及ぼす仕事は機械に任せて当然だ。AIに代替される職業の一つに宇宙飛行士が入っているが、これは人間の宇宙飛行士がいなくなるという話ではなくて、船外活動のような危険な作業だけAIに任せてしまおうという意味だ。頭脳労働でもあるので、AIと協力する効果は大きいだろう。宇宙時代の幕開けを前にデブリ(宇宙ゴミ)回収にビジネスチャンスを見出す実業家も存在する。20年ほど前にNHKで放送していたアニメ「プラネテス」の世界が現実になるんだ。作中では人間が危険な船外活動に従事していたんだけど、このような危険な作業はAIに任せるようになるだろう。ロボットアームの制御の難しさが指摘されそうだが、対象物の形態を機械学習させる試みが既に行われている。物流業の完全自動化が実現した暁には、宇宙での作業もAIに任せられるようになるだろう。

 

インストールで学習が完了する未来 

 

先程の通訳・翻訳者の話と通じる部分があるだろうか。筆者の知る語学を得意とする人も度々この話題を口にしていた。殆ど人間のAI化と言えるだろうか、脳にチップを埋め込むことで暗記学習が不要になるというものだ。これは妄想や空想科学の類ではなくて、実現に向けて研究が進められている。実用化されれば外国語を脳に流し込むことができる。トレーニングが必要なのはせいぜい発音ぐらいだろう。自動運転の普及を懸念するドライバーのように拘りを持っている人にとっては語学学習の醍醐味を失ってしまう危機ではあるんだけど、暗記系科目で無駄に消費するぐらいなら全ての人間が知識を吸収した上で、能力に応じて実戦、応用できるように教育した方がより高度な文明を生み出せる。人類にとっては決して悪い話ではない。AIのIQは人間の100倍、つまり1万まで引き上げることが可能だとも言われている。100前後で優劣を競い合っている人間には到底想像もできない世界だ。我々がAIに支配されないようにするためには、自らがAIに近付く他ない。脳にチップを埋め込むことは、知能の向上以外にも恩恵がある。具体的には脳機能障害を持つ患者のペースメーカー的な役割も果たせるのではないだろうか。記憶障害も解消できるかもしれない。AIを駆使して人間の能力を拡張できれば、人間の医師がWatson(IBM社のAI)になることだって出来るかもしれない。人間の医師が数千万の論文を読みあさり、無数の症例の確認や治療法の確立を行い、医師の仕事を拡張する。弁護士も同様だ。膨大な数の判例から最適解を導き出すことで裁判の準備が進め易くなるし、(これも問題になったが)パラリーガルにまる投げしていた破産手続きも遅延なくAIが完了させてくれるだろう。人間の事務員を雇っていると急な休暇が入り仕事が進まないこともある。雇用主からしたら早く確実に、文句も言わずに仕事をこなしてくれるAIを導入できるのであれば人間の労働者は不要だろう。

 

労働から解放され、消費することが人の役割になる未来 

 

労働から解放された人たちはベーシックインカムで生計を立て、不足分は人にしかこなせない仕事をすること補うようになるだろう。国はAIに補うことが難しい職域で雇用を促すため法整備を整えるはずだ。いずれにしても労働に対する人間の意識はこの先数十年の間に変化し、ナノテクノロジーの発展した未来では、人は完全に労働から解放される。100年後には生きる目的の有無で人の幸福度は変わってくるだろう。仕事を目的と捉え、ポジションにこだわりを持っている現代人の意識のままでは生きづらい世の中になる。

 

前後編に渡って読んでくれてありがとう。テクノロジーの進化を見据えることで、新たな生き方を模索する切っ掛けになれば幸いだ。

 

これからも最新動向に合わせて記事を投稿するつもりなので、気が向いたら読んでみて欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。