ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

テクノロジーが牽引する物流の未来

テクノロジー牽引する物流の未来


今日は少し趣向を変えて、テクノロジーの側面から物流の未来を予想してみたいと思う。

これから20~30年でテクノロジーが飛躍的な進歩を遂げることは明らかだ。我々の日常生活は激変すると同時に、現存する職業の殆どが自動化され、街中の有り様はかつて見たことのない光景へと切り替わっていくことだろう。日々の商品売買はもちろん、人が生きて行く上で欠くことのできない医療、紛争解決手段である法律分野、学術研究など、歴史上、人の手を離れることのなかったあらゆる職業領域で何かしらの変革が起きることは間違いないと考えている。今日はその中でも特に物流にスポットを当てることによって、未来の配送手段と生活の変化を覗いていこうと思う。

 

 

テクノロジーが人と物の移動を変える

空を制し、自動運転が陸路を補う

過去の記事でも紹介しているけど、自動運転が我々の生活にもたらす変化は計り知れない。

hikari-note.hatenablog.com

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交通事故の減少はもちろんだが、高齢者や障害者の移動が改善される点も大きいと言える。その先にあるのは物流業界の変化だ。直近の課題として再来年から施行される自動車運転業務従事者の残業時間の制限がある。2024年1月からの施行になるのだが、ドライバーの年間残業時間が960時間までに限られてしまうようになる。長時間の労働は運転者への負担も大きく、安全面からも配慮が必要になるためやむを得ない改正だが、スピーディーな配送が求められる昨今の物流事情を鑑みると、早期解決が不可欠な問題と言える。これについては既にヤマト運輸が陸路の代替輸送手段として独自の空輸手段を確保している。空飛ぶ黒猫「クロネコヤマト機」の登場だ。エアバスA321ceo P2F型機の導入によって実現したもので、日本航空JAL)の協力で実現する。近年、パンデミックによって打撃を受けていた航空業界と人手不足の物流業界が協力することで雇用の拡大が実現したのだ。

 

これによって負担が軽減されたとはいえ陸路の問題は未だ解決していない。そこで次にやってくるのが自動運転だ。2030年以降はガソリン車の販売廃止に伴い、次第にEV車へと置き換わって行くので、将来的には騒音や排気ガスによる環境汚染(CO2削減)問題は解消されることだろう。現時点で政府が注目している電気自動車の普及さえ実現すればいよいよ自動運転への切り替えに力を入れていくことになる。自動運転レベル3までの間は人間のドライバーが乗車し、緊急時の対処をすることになるが、従来のような長時間の運転からは解消されるようになる。そしてシステムが全てを制御できるレベル4以降は自動化された物流トラックが高速道路を走行できるようになるだろう。交通事故発生時の対処や積荷の管理に人の手を必要とするが、熟練した運転技術は不要となる。重たい荷物の積み下ろしもパワーアシストスーツの導入で容易になり、年齢や体力を問わず誰でもこなせるようになるだろう。

 

量子コンピューターが交通網を最適化する 渋滞の解消

次にやってくる変化が渋滞からの解消だ。膨大な計算を得意とするスーパーコンピューターに対して量子コンピューターは組み合わせの最適化を得意としている。これを信号機の制御に応用することで、渋滞問題を解決することができるんだ。青信号の点灯時間と交通量の把握により最適なタイミングで点灯を切り替えることができればよいのだが、従来のシステムでは実現が困難であった。スーパーコンピューターでさえ組み合わせの最適化処理に膨大な時間を要してしまう。これは従来のコンピューターが1ビットを0か1のどちらか一つでしか表すことができなかったからだけど、量子コンピューターは0と1を重ね合わせることで並列して計算することができる。1量子ビットという量子の特性を生かすことで、難解であった組み合わせ問題を瞬時に計算することができてしまうんだ。交通網の最適化による渋滞の解消は、日常の移動はもちろん、スピーディーな配送を後押しすることは間違いないだろう。

 

テクノロジーが労働環境を変える

管理職とAI労働者

現場の管理職に求められるスキルも変化していくことだろう。かつてはチーム管理とタスクの進行、ときに部下を叱咤激励し、成果の向上を目指すことがリーダーに求められるスキルであったが、ここに人口知能が加わることによって求められる適性も変わってくる。対人コミュニケーションの他にAIを制するスキルも求められるようになるんだ。部下にAIが加わるのだから、管理職は当然制御を得意とする上司でなければならないだろう。人工知能には美辞麗句が通用しないので、論理的な入力(命令発信)が最短、最高の成果へと繋がることになる。物流業においても倉庫内作業が自動化されるなど、現場の指揮にも変化がもたらされることになる。広大な倉庫内を動き回るのはベテラン作業員の得意とするところであったが、労働時間と体力に上限のある人間を酷使するわけにはいかない。そこで、倉庫内の配置をAIに最適化させて、経験の浅い労働者でも熟練者相当の仕事がこなせるように取り計らう必要があるだろう。そこでAIを如何に活用していくか、また、使いこなせるのかが現場管理者に求められるんだ。今回は物流をメインに語ってはいるけど、これは他の業種にも言えることだ。逆を言えば対人関係が苦手な人であってもシステムが相手であれば能力を発揮できる者が出てくるかもしれない。様々な職が自動化される中で、自らのポジションを確立していくことが人間労働者の課題になるだろう。

 

配送センターの作業がロボットに置き換わる

空と陸を制することで加速する配達

次に訪れるテクノロジーの波は配達の自動化だ。県を跨いだ長距離輸送は先に紹介した運送会社所有の機体による空輸になるだろうが、地域ごとの営業所から各世帯への配達は箱型の配送ロボットやドローン配送システムが担うことになるだろう。小回りの利くドローンは災害時の捜索や救助(治療器具とモニターを搭載したハイテク救急箱を現場に向かわせる)に活用されているんだけど、これが物流にも応用される未来も近い。Amazonや中国ECサイト最大手のアリババが実証実験に取り掛かっているが、日本でも楽天が東電やゼンリンと組んで運搬実験に取り掛かっている。既に送電線を利用したドローンハイウェイにより弁当などの軽量な荷物の運搬であれば可能とされている。自動操縦による配達が実現すれば、宅配業界の人手不足解消に繋がることは間違いない。やがてドローンの利用が個人にまで普及すれば、ヤフオクやメルカリ等での取引で活用されることになるだろう。個人間での荷物のやり取りが自動化されれば運送会社に依頼する必要はなくなってしまう。航空会社のANAが自社のノウハウを生かしてドローン運行用のルートを開拓中だ。物流業界も次なる波に備えてシェアリングエコノミーを支えるポジションを取るため積極的に食い込んでいく必要があるだろう。

 

最終局面  3Dプリンターは商品配達を不要にするのか? 

データを物質化し、物をデータのように圧縮する時代

物質の移動が不要になるというのは言い過ぎだが、3Dプリンターの普及が物流に影響を与える可能性は高いと言える。この技術で対応できる分野は幅広く、医療や食品、アパレルにまで応用できるんだ。医療分野では、臓器や人体パーツの形成が、各人の幹細胞から行うことが可能だ。また、食品分野においては、牛や豚の細胞から人工肉を形成することもできるという。人口肉が食卓に並ぶ日が到来した暁には、いよいよ臓器の形成、移植手術も身近なものになるだろう。料理であれば、レシピをもとにその場で食品を3Dプリントして食する時代がやってくるはずだ。ケーキなんかのおやつも3Dプリンターで作って食べるようになる。ただし食品カートリッジが必要になるので、物質の配達がまったく必要なくなるわけではない。衣類も3Dプリントして作ることができるだろう。ネットでお気に入りの商品が見つかったらポチッてスマホにバーコードを表示させる。そして自宅かコンビニにある3Dプリンターに読み取らせて精製するというのが未来の買い物の光景になるんだ。

 

ここまで話した3Dプリンティング技術は自動運転とは違って法整備の問題はないので普及はあっという間かもしれない。とはいえ機器やカートリッジの仕入れが必要になるので、物質の運搬が不要になることはないだろう。物流が影響を受けるのは次にくる4Dプリンターであると筆者は予想している。これは3Dプリンティングとは違い、物質の形状を自由に変化させることを可能とする。言ってみれば超圧縮技術だ。現在でも布団などのそのままでは大きな商品は圧縮されて届くが、この圧縮率が倍増して、手のひらサイズの商品が届けられると考えれば分かりやすいだろう。まるでフィクションのような光景になってしまうが、実現不可能な話ではないんだ。将来的には4Dプリンティングを活用して密度を最小限に抑えられた商品が運搬されるようになるだろう。それが常識となれば、軽量な荷物の運送に適したドローン配送の活用が増えるだろうし、倉庫での商品保管も場所を取らなくなるだろう。これによって災害への備えもやりやすくなる。逆に、今は当たり前のように使っている60、120~140サイズなどの段ボール箱での発送は『大きな荷物は迷惑!』と考えられる風潮になっているかもしれない。

 

メタバースの普及で人と物の移動が変わる

VRゴーグルを装着して自宅に居ながら仮想空間に構築された街中を散策し、世界中の人々と交流することができるメタバースの存在は、みんなも知っていることだろう。仮想現実で活動するという発想は30年以上前から既に存在していたんだけど、かつてのように3Dポリゴン化された箱を動かして終わりというものではない。今や仮想空間に構築された街を歩き回ることさえも可能となった。将来的には脳インプラントとの組み合わせでよりリアルな没入感を味わい、本物の手足のように自由に動かせるようになれば、飲食以外の日常生活は殆ど仮想空間の中で完結できることだろう。

 

『そんなことがあるわけないだろ!』と思ってしまう人もいるだろうが、現時点でメタバース上でのアルバイトも募集されている。

 

あなたがその仕事に就いたなら、自宅にいながらにしてメタバース上に作られたお店やイベント会場でアバターを動かして接客することになる。出勤はログインを表していて、現実世界での仕事と同様に勤務扱いとなる。違いは移動を省けるところだろう。ここが大きな違いだ。テレワークの延長と考えれば分かりやすいが、顧客とアバターとして対面して接客できるところがおもしろい。

 

これらの技術は物流の話と関係なさそうだと感じてしまうかもしれないが、現実世界との関わりが一切なくなるわけではないんだ。仮想空間のお店で購入した商品は、通常のネットショッピングと同様に、自宅に配送されるようになる。“ポチる”行為にメタバースが現実の“買い物”感覚を付与するだけで、商品はリアルに配送されることになる。例外としてメタバース上で使用するアイテムもあるけど、アバターの着用している服と同じものがリアルでも欲しいなどの要望も出て来るだろう。結果として、物流に頼る要因が増加することになる。ドローン配送が実現すれば、運送会社の窓口を仮想空間に開設して自宅への集荷手続きが行えるようになるかもしれない。人が生活している限り、物流との関係は切っても切れないものなんだ。

 

最終局面 人型ロボットに代替される未来

人口減少と高齢化による労働力不足はテスラボットで補える?

さて、ここまでテクノロジーの進化と物流について語って来たんだけど、技術の発展が見込まれると需要は増大し、労働力が追い付かなくなる恐れがあることが分かった。ドローンや配達ロボットなどのシステムも構築されつつあるが、箱型ロボで集合住宅に対応することは難しいだろうし、まだまだ問題解決には程遠いように思われていた。

そんな中で革新的な提案をしたのが、電気自動車、宇宙開発でお馴染みのテスラ社CEOのイーロン・マスク氏だ。

 

youtu.be

 

この汎用人工知能(AGI)オプティマス(Optimus)の開発プロジェクトは既に昨年、2021年の段階で公表されている。

 

マスク氏は今年、人口減少と高齢化が進む日本の現状を鑑み「日本はいずれ消滅」するという衝撃的なツイートをして注目を集めた。しかし、ただ注目されて終わりではない。具体的な解決策として、人型ロボット、テルラボットの開発を発表していたんだ。

 

テルラボットは来年、2023年には生産が開始される予定だ。人型なので、より複雑な作業が期待できるだろう。搭載するAIのアップデートを重ねることで、緊急時の対応や高度な作業に対応できるようになるはずだ。価格は1体あたり1万ドルとも噂されているが、価格と性能次第では物流業界に導入される可能性も高い。

 

開発チームには、完全な自動運転システムの実現のために経験を重ねて来たAIエンジニアたちが加わることによって、軽作業はもちろん、高度な仕事への従事が可能なロボットの普及も期待できる。身長170cm前後、体重60kg程度という一般的な成人男性に近い体系をしており、好意的なコミュニケーションが可能とされている。人間に近く柔軟な動きが可能なため警戒してしまうが、安全対策として成人男性よりも力は弱く設定されている。それはつまり、物流業で作業に従事することが難しいことも意味する。オプティマスを使うのであれば配送窓口での軽作業や運転を中心に、人間のパートナーと共に働くようになるかもしれない。

 

今日はテクノロジーの進化が物流にもたらす影響について語ってみたけど、どうだっただろうか。これからもおもしろい技術の話が発表されたら未来予想をしてみたいと思う。

 

それでは、また次回の記事で。