ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

自動運転技術の未来 「自動緊急回避システム」がより安全な走行を実現する

自動運転技術の未来

今日は自動運転機能搭載の市販車両と次にやってくる最新技術について見て行こうと思う。以前にもこのブログでは最新テクノロジーの話題の一つとして自動運転を紹介しているんだけど、今回はテーマを絞って深堀して行くつもりだ。

 

自動運転搭載車両の現状

さて、遠い未来の話だと思われていた自動運転なのだが、ホンダは既に2022年には世界初となる自動運転技術レベル3を実現したレジェンドを販売している。こちらは運転支援機能として渋滞時に運転を支援してくれる「トラフィックジャムパイロット」が搭載されている。非常に魅力的なモデルではあるのだけど100台限定販売な上に価格が1千万円超えということから一般への普及が難しいことが窺える。しかし、その名の通り自動運転車の伝説となるような画期的な進化を遂げたことは間違いないと筆者は考えている。

レベル3(条件付自動運転車)で要求される事

レベル3(条件付自動運転車)以上ではドライバーに責任が問われないことをまずは確認しておきたい。その上で、オートパイロット機能の使用は高速道路等の一定条件下でのみ可能であることや、運転者に介入要求があればすぐにハンドルを握る準備が必要であることも忘れてはいけない。当然、目視確認も要求されるため、つねにカメラで運転者の目線は監視されている。この点が全タスクをシステムに任せられるレベル4との違いだ。

 

レベル3(条件付自動運転車)のメリット

それでは大した恩恵は受けられないのではと思われるかも知れないが、制限はあるものの、長距離移動におけるドライバーへの負担は格段に少なくなるだろう。実際、1000kmを超える長距離移動の際にもレベル3の自動運転車両を使うことで快適な旅を実現できたと語る人もいる。常時緊張感を持ち、アクセルを踏み続けることの負担も大きいのだろう。やはりシステムが補助してくれる影響は大きいのだ。

 

自動運転搭載車両の課題

ホンダ以外にもテスラやメルセデスベンツBMWなどの各社から自動運転機能を搭載した車両は一般販売されている。いずれも完全自動運転こそ実現していないのだけど、走行中に腕を組むなどの自由な姿勢が運転者に許されている。もちろん、目視で道路状況を確認することは必須だ。また、現実的な課題としては周囲のドライバーに対して自分の車両が自動運転モードで走行していることを周知しなければいけないことだろう。レジェンドでは青色LEDランプを前後のバンパーで点灯させることで周囲に条件付き自動運転中であることを示す形となる他、国指定のステッカー(「AUTOMATED DRIVE」と記載)を装着することになっているが、果たして走行中のドライバーの何人がこちらが自動運転車であることを認識できるのだろうか?これについては国交省により法制化、周知を進めてもらうことで車両間での配慮を促す他ないと言える。現時点では急な車線変更をされた際に後続する自動運転車が対応困難であるなどの問題もあり、接触事故に繋がる恐れがあるからだ。普通車のドライバーに自動運転車の存在を示すことは条件付自動運転車を普及させる上での最低条件となるだろう。

 

課題解決のための最新技術

ここまでが、現在公道を走行できる自動運転車の現状の説明になる。いずれも長距離移動の負担軽減に寄与することは確かだ。もちろん、レベル2のハンズフリーモードだけでも快適なドライブが楽しめることだろう。しかし、道路状況の変化への対応、周囲の車両の予期せぬ挙動で起こる接触事故を防ぐのはまだまだ難しいというのが実情だ。そんな中でこのほど発表されたのが、日産が開発した「緊急操舵回避支援システム」だ。その名が示す通り緊急回避時に自動でハンドル操作を行ってくれるシステムで世界初の技術とされている。早ければあと3年ほど、2020年代半ばまでには実現し、市販車両に搭載される見込みとなっている。

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上の参考映像で確認してもらえば分かるけど、歩行者の急な飛び出しや転がってきたタイヤを回避し、次に脱輪した(と想定される)車両が飛び出して来た時には急停止するまでの動作が披露されている。ここまででも凄い技術だけど、路面に置かれたパレット(目視では発見困難)を早期に検知して緩やかに回避することさえも可能だ。実はこの機能にこそ日産が開発を進める緊急回避技術の凄さを確認することができる。理由は、このシステムを支える技術が自動運転センサーLiDAR(ライダー)であることだ。

 

自動運転センサーLiDAR(ライダー)

今、世界で自動運転の覇権を掴もうとしているテスラ社のイーロン・マスク氏は、LiDARに否定的な立場を取っている。もっと言えば『LiDARを使うのはバカ』とまで言っているのだ。筆者も当初はマスク氏の言うことなので鵜呑みにしてしまいそうになっていたんだけど、日産の「緊急操舵回避支援システム」を見てから考えが変わった。テスラはカメラ映像での解析に力を入れているけど、先程紹介した路上に放置されたパレットの存在を予測することは余程精度の高いカメラでもない限りは難しいし、カメラ解析では路上にあるあらゆる物体を障害物と誤認して回避することになってしまうかも知れない。しかしLiDARであれば300m先にある物体(車両であれば350m)まで予測可能であると開発担当者は説明している。現時点ではカメラとLiDARを駆使した日産車の方が安全性は高いと断言できるのではないだろうか。

 

緊急操舵回避支援システム

日産は交通事故死亡者ゼロを目標に掲げており、90年代から運転支援システムの開発に取り組んできたという。2004年には「セーフティ・シールド」コンセプトを掲げ、世界初となる最新技術を投入し、“人を守る車”の開発に着手してきたのだ。凡そ20年間に渡る取り込みの一つの集大成と言える形で実現したのが、今回メディアに向けて大々的に発表された「緊急操舵回避支援システム」だった。

通常の運転における事故を車が回避してくれることはもちろんだけど、将来的には自動運転システムを支える重要な技術になることは間違いない。実際、日産は自動運転車への搭載を前提として開発を進めている。各自動車会社が自動運転レベルの向上を急ぐ中、人身事故を回避する機能の搭載が不可欠と考えたからだろう。世論を納得させ、法整備を進めるには機械任せの運転に不安を覚える人たちには「危険が顕在化している」道路での“もしものとき”の安全を約束することが不可欠だからだ。それゆえに、刻々と変化する道路状況と危険予測、瞬時の判断、状況に応じた最良と思われる回避行動が人工知能には期待されている。

例えば、実際に起きた事故をもとに実証するならば、先行する車両が横転した場合やフロントガラス目がけて飛んできたドラム缶を回避する際に道路状況に応じて最良と思われる回避行動に出なければならない。緊急操舵で避けるのか、急ブレーキで衝突を避けるのか、熟練したドライバー同様かそれ以上の予測と瞬発力を実現するものが「認識技術(perception)」の革新とされている。ここで、先に上げたLiDER(次世代高性能ライダーを使用)とカメラ、及びレーダーの搭載が必要となる。両者ともに短所と長所があり、具体的にはカメラは多くの情報を把握することはできるけど、移動する物体の変化を予測し、軌道を正確に把握する能力に欠ける側面がある。一方のレーダーは瞬時に物体を捉えることには優れているけど電波の反射の強さを物体の大きさに置き換えて把握しているため、正確に対象物の形状を把握することが難しく、また急な変化に即応することも不得手とされている。そこで、各々の短所を埋めるべく搭載されるのが次世代高性能LiDERなのだ。レーダーのように電波の反射で捉えるのでもなく、カメラのように2Dから3Dへと予測、推定するのではなく直接3D空間を(3Dプリンターのように)把握し、計測を行えるから正確性はもちろん即時性に優れていることが特徴だ。

 

まとめ

今回、自動運転技術の説明で敢えて日産の「緊急操舵回避支援システム」を紹介し、詳細な仕組みを説明したのは、事前に紹介したテスラの自動運転開発状況と比較するのが目的だったからだ。あくまでもカメラに頼るのか、カメラ、レーダー、LiDERを駆使してそれぞれの短所を補いながらより安全な走行を実現するのか。自動車に詳しくない人間であっても結果は見えてくることだろう。筆者も自動車には疎く、テクノロジーの一分野として自動運転に興味関心を向けているに過ぎないのだけど、日産が開発を進める新技術の実現が自動運転競争の勝敗を分けることは何となく予想が付くはずだ。興味のある人は自動車メーカーごとの開発状況と照らし合わせて確認してみて欲しい。

悲惨な事故が減り、誰でも安全、快適に移動できる車社会が実現することを切に願っている。