ヒカリの学習ノート

ヒカリの学習ノート

「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

人々が労働から解放される未来 ― サム・アルトマンが目指すAI社会とベーシックインカム ―

AI社会とベーシックインカム

大規模言語モデル(LLM)が話題となって久しい昨今、連日のニュースでChatGPTの名前を聞かない日はないほどだ。愚痴を聞いてくれたり、相談相手になってくれたりもするこの優秀なパートナーは、時には的確な回答を示してくれるだけでなく、ユーモアを交えた面白い返答もしてくれる。まるで人間のようなChatGPTは最初こそ称賛されていたのだけど、いざ賢いAIが身近に現れたことで人々の心に”ある不安”が浮かんだことは言うまでもないだろう。そう、テクノロジーの進化で必ず訪れる社会変化の一つ、機械による仕事の代替だ。産業革命以来、労働者たちが怯え、怒り、混乱してきた変革が、令和の世で再び起ころうとしている。しかも、今世紀は先人達が体験してきた単純労働をサポートする技術革新ではなく、人のコピーにもなり得る人工知能が姿を表しつつあるんだ。少なくとも従来は不可能とされてきた複雑なプロセスと正確な判断を要する仕事の在り方を話題のChatGPTが変えていくことは間違いない。AIによってもたらされる第三次産業革命は、学歴社会において安定と思われてきた頭脳労働者を脅威にさらしている。ホワイトカラーはまさに晴天の霹靂ともいえる急速な変化に見舞われているわけだが、ChatGPTの開発元であるOpenAIのサム・アルトマンCEOは、既に2017年にはAIと仕事の代替について想定しており、その際にベーシックインカムが必要であることを明かしている。驚くべきは、一律の給付を政府に頼るのではなく、民間企業が開発した仮想通貨を全ての人間に配布するというとんでもないアイディアだ。この記事では、そんな若き天才、サム・アルトマンの夢見るベーシックインカムとAIによって仕事が代替される世界とその影響について触れていきたい。

 

あなたを労働から解放する アルトマンの夢見る未来構想

最初に誤解しないでおいてもらいたいのは、サム・アルトマンは決して人々から仕事を奪って苦しめたいわけではないということだ。人類を辛い労働から解放することによってストレスの無い生活を送ってもらうことを目指してAIの発展に取り組んできたということを覚えておいて欲しい。その上で、最初に思い浮かんでくるのが、人々が“どうやってお金を稼ぐのか”という疑問だろう。これについてアルトマンは既に5年も前に解決策を提案している。それが、ベーシックインカムの給付だ。何を今更と思ったかも知れないが、アルトマンは各国政府にベーシックインカムの給付を要請しているわけではない。彼がやろうとしていることは自らが開発した仮想通貨の給付だ。年齢や性別、所得に関係なく、世界中の誰もが受け取ることのできる通貨として「Worldcoin(ワールドコイン)」プロジェクトを画策しているんだ。この計画は今月に入ってから再びニュースで取り上げられるようになったから、既に知っている人もいるだろう。フィナンシャルタイムズによると、新たに1億ドルの資金調達を計画しているとされているが、同社は過去2年で2億ドル以上の調達に成功しているので、ワールドコインの計画は順調と言えるのではないだろうか。

 

仮想通貨「ワールドコイン」の給付に伴うリスク対策

今更説明するまでもなく、サム・アルトマンはChatGPTを開発したOpenAIの創業者だ。安易にハッキングされるようなシステムは作らないだろう。もちろん、安全性についても万全な対策を提唱している。多くの人が懸念するのはベーシックインカムの強奪と不正受給だろう。例えば他人のコインを奪うなどの悪質な犯罪は、ビットコインなど従来の仮想通貨でも発生している。しかし、そこは安心して大丈夫だろう。ハッキングによる仮想通貨の強奪を防ぐためにワールドコインでは人間の「虹彩」をスキャンすることであなたの財産を守ってくれる。アプリで読み込まれた虹彩から持ち主を判別するのはAIだ。ここでもまた、人工知能が重要な仕事を請け負っていることが分かるだろう。本人確認に虹彩を使う理由は、絶対に偽装できないからだ。これまでにも身分証明書の提示やパスワードなど様々な認証方法が開発されてきたが、どれも安全性には乏しくハッキングの危険にさらされてきた。しかし、偽装不可能な虹彩をスキャンすることでこの問題は確実に解消される。生活を維持する上で不可欠な、まさに命に関わる資産であるコインを他人から盗まれる心配がなくなるだけでも心の負担が軽くなるというものだろう。

 

人間から労働を奪うことは悪なのか? 効率化とやりがいの狭間で

実力と行動力を持ち、政財界問わず世界中の人々から注目されている今のアルトマンであれば、ワールドコインを実用化することはもちろん、将来的にはベーシックインカムも実現してしまうかもしれない。そうなったときに問題になるのは、給付を受ける我々の心構えになってくる。ここからはテクノロジー分野の話ではなく、このブログらしく「お金」の雑学的な話になるのだが、筆者が過去の記事でも繰り返し述べているように、通貨というものは【人間を働かせるためのツール】に過ぎないということを最初にはっきりさせておきたい。これについては「モズラーの名刺モデル」をもとにした話をしているので、過去の記事を参照してもらいたい。

 

hikari-note.hatenablog.com

 

当たり前の話ではあるが、かつて人間は、力を合わせて働き、衣食住を確保しなければ生きていけなかった。産業革命以前の世界では子供が貴重な労働力であった理由もそこにある。義務教育が必要な子供たちでさえ長時間の肉体労働に従事していたのは、それだけ「労働」という行為が人類の生存のために不可欠であったからだ。
産業革命で機械化が加速した後の世界であっても根本の部分が変わることはなかった。しかし、工学の発展で生産性が向上し、物とサービスに溢れる昨今では、本当にこの仕事は必要なのかという疑問を抱いている人もいるのではないだろうか。貨幣という人間を働かせるためのツールを得るために、わざわざ限られた資源やエネルギーを無駄にしてまで不必要な作業を強要しているのではないだろうか。
そして、いよいよ人工知能が人間の代わりに働いてくれる世界が目前となった今、人々に労働を促すための「お金」というツールは本当に必要なものなのかという疑問に繋がってくるわけだが、そこは明確に否定させてもらう。
通貨は絶対に必要なんだ。何故なら、資源やエネルギーは有限だからだ。
これについても過去の記事で触れていたかもしれないが、お金はただの電子データに過ぎない、人間が作り上げた妄想上の価値だ。
財政法による制限や世界経済を無視すれば政府が国民ひとりあたり1億円配ることだって可能だ。しかしそんなことをしたらインフレになることは誰にでも容易に想像が付くことだろう。
ではなぜ、インフレになるんだろうか?それは、データに過ぎないお金はいくらでも創造できるが物やサービスは有限だからだ。需要が供給を上回ればインフレが起きるのは当たり前のことだ。
このように、地球上に存在している資源、電気や石油などのエネルギーは有限だ。
AIのお陰で労働から解放された人類が無制限に物を得ることができるようになれば、資源やエネルギーが枯渇することは目に見えている。「お金」には人に労働を促すための役割以外にも、消費を抑制する役目があることが、この話から伝わってくるのではないだろうか。
ZOZOTOWNの創業者である前澤友作氏が「お金のない世界を実現したい」というような話をしていたが、筆者は絶対に不可能だと分かっていた。理由は先の説明からも分かるだろう。お金がなければ無秩序な消費が横行するからだ。
筆者は断じて環境保護論者ではないが、地球上の資源とエネルギーが有限であることは揺らぎようのない事実である。もちろん、ナノテクノロジーの発展でそれさえも克服した未来で「お金」というツールがどのような役割を担っているのかは現時点では断言できない。
労働力という有限の価値が人工知能に置き換わることでサービスの提供は無限となり、資源さえ確保できれば無制限に物が提供できる世界では、きっと我々が想像もできないような生活を送っていることだろう。それが幸せかどうかは分からないが、すべてのストレスから解放され、豊かに生きる人類の寿命が爆増することは間違いない。ライスワーク(ただ生きるためだけの労働)から解放されることで、面倒な人間関係からも解放され、豊かな生活が保障された未来で期待できるのが犯罪率の減少だ。先にも説明した通り他人の仮想通貨を奪うことが不可能であることはもちろんだが、他人から奪わずとも生活できる世の中になれば、100%ではなくとも現状よりは犯罪行為は減少することだろう。職場の人間関係による事件も、無理に働かなくても良い社会が実現すればなくなって行くはずだ。

 

たまにいる労働からの解放を嫌がる人たちは、恐らく仕事を存在意義の確立や生きる「目的」にしているのではないだろうか。
自動運転を例に上げると分かりやすいが、筆者は自動車をただの“移動手段”とみなしている。安全、快適に目的地に到着してくれるのであれば、運転者が人間である必要はない。むしろ気を遣わなくて良いのでAIの方が気楽とも言える。しかし、自動運転をかたくなに嫌がる人は『運転は自分でした方が楽しい』と主張する。筆者の従弟たちは車が趣味なので、まさにその主張を押し通してくるのだが、彼らに『車は“移動手段”に過ぎないから安全性さえ担保できれば何の問題もないんだよ。残すは法的な問題だけだ』と話したところで通じない。何故なら彼らにとって運転は移動手段ではなく「目的」になっているからだ。だからこれ以上話し合ったところで決着はつかないし、感情論のぶつかり合う泥沼の論戦となる。人々が労働から解放される未来の話も同様で、仕事が「目的」の人たちにいくらお金の意味や生活が保障される話をしても通じない。この辺の議論はあきらめて、AIの恩恵が当たり前の世代に切り替わるまで待つしかないだろう。

 

全人類が自由市民になった未来の生き方と価値観

先ずは「仕事」との向き合い方について今一度考えてみて欲しい。
AIによる代替を懸念しているのは、生活の不安からだろうか?それであればベーシックインカムで生活の不安がなくなれば問題ないはずだ。例えば漫画家や作家、スポーツ選手のように、一概にライスワークとはいえない仕事に従事している人たちもいる。彼らには好きなことを追求する気持ちやプロ意識、信念に基づく確固たる想いがあるのだろう。
だが、世の中を支える、我々の生活に必要不可欠な労働に限って安く過酷で、脚光を浴びることのない仕事であったりもする。あなたは劣悪な環境下で何時間も重い荷物を運びたいと思うだろうか。炎天下で何時間も立っていたいだろうか。自分が率先してやりたいと思えない仕事に従事している労働者のことを少しでも考えてみて欲しい。
その人たちがベーシックインカムで生活できて、別なこと、例えば学習や新たなビジネスの立ち上げに挑戦できて、次に繋がるチャンスを得ることができるのであれば、悪いことではないのではないだろうか。

 

SNSなどを見ているとまだお金の意味を理解していない人が散見される。直視したくないのかも知れないが「お金」は他人に”嫌なことを強制するためのツール”だという側面を常に意識しおくべきだ。
誰も好き好んで大雪や炎天下であなたの家に荷物なんて届けない。明日にでも高額当選すれば辞めるだろう。実際、物流業の長時間労働と低賃金が問題になっている。
であるならば、早々に自動化を進めて労働から解放してあげるべきだろう。
こういう話をしていると必ず「労働なくお金を得ることは悪」だと主張する人が出て来るが、そういう人間は十中八九経営者(自分のやりたくない仕事をお金というツールを遣って他人にやらせている人間)であることからも、その真意が分かるはずだ。
AIがより進化すれば、コスト削減で自動化に走るだろう。実際、国外では半数以上の従業員を解雇して人工知能に切り替える企業が続々と出てきている。今のところオフィス勤務の仕事が中心ではあるが、この波はいずれ専門職にも及んでいくことだろう。

 

まとめ

後半はいつもの「お金」の話になってしまったが、テクノロジーの進化、特にAIの話題を扱う上でクリアしなければいけないテーマが労働とお金の話なので、敢えて長く語らせてもらった。

 

ChatGPTの登場以降、隣接分野が大きな変革を迫られている。ゴールドマン・サックスのレポートによれば、AIは3億人のフルタイム雇用に相当する可能性があり、多くの人々が雇用の喪失を経験するだろうと言われている。しかし、連日見聞きする人工知能の急速な変化を追う限りでは、我々が考えていたよりも大きな変化が数年単位で起こるのではないかとも思える。2045年のシンギュラリティや未来予想は、ChatGPTが登場する以前のものだ。情勢は大きく変わってしまった。例えば、検索エンジンの存在が脅かされることで、ネットとの向き合い方が変わると同時に、これまで不可欠だったSEO対策のスキルが重要性を失ってしまったり、ディープフェイクなどの高度な技術を要するものが素人にも簡単に作れるようになってしまったりと、日常生活とビジネスの変化から、悪用に繋がるものまでその波及は広範囲に及んでいる。最終的にはAIによる仕事の代替で自由になった人間の在り方という哲学的なテーマへと繋がっていくのだ。このブログは「お金」を中心に扱っているので、この問題に関してはお金の意味と労働の本質を切り口として語って来た。

 

サム・アルトマンもAI時代の世界という課題に対しては人々と労働という切り口からアプローチしてベーシックインカムの導入を提唱していることからも、やはり人間にとって重要な問題は仕事の代替と生活資金の確保という問題になるので、労働の意味を見直しながら、人間を働かせるツールとしての「お金」と向き合うことは大切なのだと思う。

 

民間企業が主導してベーシックインカムを提供することによる不安や疑念は筆者も把握している。確かに、国家ではない個人の集団に生殺与奪を委ねることには危険が伴うという意見はもっともだ。しかし、法定通貨と並行して使われる仮想通貨が出回るときには再び国会で運用を前提としてワールドコインの給付方法や条件、企業の義務について立法と同時に構築されていくはずだ。法定通貨との関係や税金の話も絡むので、流石に民間企業に丸投げするようなことにはならないだろう。AI時代を目前に控えたわたしたちが出来ることは限られているが、労働とお金の意味を理解することで、従来の価値感を改めれば未来に希望が持てるはずだ。今一度、我々が絶対の価値を置いてきた仕事というものの意味について問いただしてみよう。AIが仕事を完全に代替するまでには、まだ時間が残されているのだから。



最後まで読んでくれてありがとう。また、次回の記事で。