ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

長引く円安を検証する 三極通貨に於ける日本円の立ち位置

円安


一昨年、2022年の段階で長引く円安に不安を抱く人は多かった筈だ。
あらゆる規制が撤廃されて以来、インバウンド需要に活気づいているとはいえ、自国通貨安が継続することは決して心地の良いことではない。

2023年後半に差し掛かっても1ドル149円台に留まる日々が続いていた。
2024年1月現在も1ドル145円台が継続中だ。
異次元緩和の出口を模索する時期である今、植田総裁がマイナス金利政策の解除を決断する可能性は十分あり得る。

ところで、いったいなぜこんなにも円安が続いているのだろうか?
この自国通貨安を脱するときはいつ来るのだろう。
どうすれば円高に持って行くことができるのだろうか。

この記事では長引く円安の原因と2024年以降の展望について触れて行くことにする。

 

現在の円の状況

冒頭でも述べたが、円安傾向は今尚継続しており、止まる気配がない。
2023年1月には130円台であったドル円レートが9月時点では156円台という大幅な下げ幅を示していた。
8カ月で約17%も下落したことになる。
この傾向は、今尚続いていて円高に転じる兆しはない。

三極通貨(三大通貨)とは

このように自国通貨に対して弱気なイメージを抱きそうな状況が続いているが、ここで再確認しておきたい事実がある。
みんなは、世界的に取引量が多く流動性の高い通貨というと、何を思い浮かべるだろうか。
多くの人が米ドル、ユーロなどと答えるだろうけど、そこにポンド、円、豪ドルが加わった5通貨が”メジャー通貨”とされているんだ。
その中でも日本円は米ドルやユーロと並ぶ三極通貨(三大通貨)の一つとされている。

補足として、IMF、国際通貨基金が中国の人民元を米ドルとユーロに次ぐ第三通貨に位置付けており、実際構成割合としては円の8.33%に対して人民元10.92%程度で日本円を約2%上回っているが、ここでは世界経済に於ける円の立ち位置と安値の原因について分かり易く解説するために便宜上米ドル、ユーロ、円との比較を用いて見ていくことにする。

どうして円安が起きているのか

話を円安に戻そう。
私たちの多くは普段、米ドルと比較した為替レートを見て円の相対的な価値を判断していると思うけど、先に説明した通りユーロも世界経済を構成する三極通貨の一つなので、その存在を無視することはできない。
そして、我々の日本円はEU、欧州連合のユーロと比較しても下落しているという事実があるんだ。
具体的には、2023年初めのユーロ円レートは1ユーロ139円台であったが、9月には156円台にまで下落している。下落幅は約11%であり、ドル円相場と非常に近い。
米ドルだけではなく、対ユーロでも同様に下落しているというこの事実、一体なぜそのようなことが起きているのだろうか。

 

参考までに、2023年10月時点での為替相場を示すと、米ドル・円が相変わらず149円台、ユーロ・円157円台という厳しい数字を示している。
残念ながら三極通貨中最弱通貨が日本円であると言わざるを得ない。

買われる通貨の価値

悲観ばかりしていても仕方がないので、なぜ円の売り圧力が米ドルやユーロに比べて高いのかを検証してみよう。
まず、良く買われる通貨がどんなものかを考えよう。
買われる通貨の特徴としては、信用力の高さに加えて金利が高いことが上げられる。
単純な話、金利が高い米ドルやユーロは買われるが、金利の低い円は売られることになる。
特にユーロに関しては、ヨーロッパにおけるディスインフレ(物価上昇率の低下)が米国と比べて緩やかであることに加えて、日銀による金融緩和の維持が、投資家を円売りに走らせている可能性がある。
結果として、高い金利を期待できる米ドルやユーロに流れることになるんだ。
ECB(欧州中央銀行)が9月時点で政策金利を4.5%(0.25%の引き上げ)にしたことも少なからず影響しているだろう。一方で日銀は、0.1%を維持している。

貿易収支

為替レートを揺り動かす要因として考えられるものは他にもある。
特に為替への影響が大きいのが貿易収支だ。貿易赤字を出すということは、自国通貨に売り圧力がかかることを意味する。
逆に買いに転じさせたいのであれば、貿易収支を黒字にすれば良いことになる。
ならば貿易黒字になるよう輸出業を頑張れば良いのではないかと思えるが、事態はそんな単純ではない。
残念ながら、ロシア、ウクライナの問題が存続する今の国際情勢では日本においてエネルギーショックは免れない。
石油やガスといった天然資源の価格が高騰すれば、輸出業にも影響が及ぶ。
今年初旬には一時的に黒字に転じているが、依然として貿易赤字を完全に脱することは困難とされている。
これが、円売りを加速させるもう一つの要因であると言える。

エネルギーショック

尚、ロシアを主因とするエネルギーショックはユーロ圏も例外ではない。
当然、貿易でも影響を受けていて、黒字幅は縮小、2022年度下半期には赤字に転じている。
しかし同時に、赤字の底打ちも早く、今年上半期には早くも黒字に反転しているのも事実だ。
ユーロが根強い実需によって支えられていることが読み解ける事実だろう。
一方で日本も経常収支※では負けていない。
2023年上半期には名目GDP(国内総生産)で0%のユーロ圏に対して2.2%の黒字を付けている。
しかし、この経常収支の黒字を支えているものは対外金融債権における利子配当金を主とする第一次所得収支であることも見逃せない。
輸入取引で物やサービスを売って得た収益であれば外貨から円に交換する動きがあるため円高圧力を加えることができるが、金融取引での収益ではわざわざ外貨に手を付けずに再投資される傾向にあるため、円高圧力に転じ難いのだ。
これが、日本がユーロ圏に比べて強い経常収支を強みとして活かすことができない要因なんだ。

※経常収支は”貿易収支+サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支”として算出される。
日本が得ている対外金融債権の利子や配当は第一次所得収に当たる。

今後も円安が続くのか

では、円安ユーロ高の傾向は今後も続き、三極通貨最弱であり続けるのだろうか?
これについては一定の根拠をもとに、悲観し続けることではないと見ている。
確かにユーロは日本円と比べて買われやすい通貨ではあるが、それもECBによる利上げが落ち着けば変わってくるだろう。
市場の動向次第では2024年以降に利下げに転じる可能性も否定できない。
インフレが落ち着けば利上げはストップするだろう。
さらに日銀による政策が見直され、多少なりとも利上げが実行されれば日本円が買い戻されるはずだ。
もちろん、経常収支ではなく大本の貿易収支が黒字に転じない限りは再び円安に振り戻されるだろう。
イスラエルによる侵攻と日本の立ち位置次第では原油輸入に悪影響が及ぶことになる。
いや、現状では欧米諸国には倣わず、日本はイスラエルと距離を置く姿勢を示しているので、もしかすると早期にユーロと差を付けられるかもしれないが、それでも天然資源不足の波が輸出業に及ぼす影響は否定できない。
いずれにしても、さらなる円安圧力が加わる可能性は否めないだろう。

円とユーロ

ここまで円とユーロの比較から長引く円安について検証してきたが、例え世界で二番目に取引比率の高い通貨とはいえ、基軸通貨であるドルと比べればユーロは決して強い通貨ではない。
理由は、ユーロを導入している国が20も存在すること。
各国が自由な経済政策を行えないこと、財政危機の際にECBによる救済に時間がかかってしまうことなどが上げられる。
組織の規模が巨大化するほどに機動性は下がるから当然のことだろう。
もちろん、そのような本質的には弱い通貨であるユーロに対してさえ円安が続いている点は気掛かりなところではあるが、今後、ヨーロッパが金融危機に見舞われる要因はいくつかあるので、円が優位になる可能性はある。
一つは、ECBによる利上げが住宅価格を押し下げていることがあげられる。
この状況が長く続けば、不良債権を抱えた銀行が大きく圧迫されることは間違いないだろう。
さらに、冬にはエネルギー価格が上昇することが考えられる。
厳しい寒さを迎える欧州において、ロシア情勢やイスラエル問題によるエネルギー価格の上昇は到底無視できる問題ではない。
悪いインフレによる利上げが起きれば、投資家が警戒してユーロ売りに動くことも十分考えられるだろう。

まとめ

本ブログでは為替や国際経済についてはあまり触れて来なかったが、長引く円安は無視できる問題ではなかったため取り上げてみた。
興味を持った人は今後の円相場に注目して見て欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。

令和のゴールドラッシュは狙えるか? 古いスマホの価値から考える都市鉱山に眠るチャンス

久し振りの更新なのでお金とテクノロジーをメインテーマとして扱うこのブログらしい題材を記事にしたいと思う。
タイトルにもある通り、今回扱う話は都市鉱山に見る令和のゴールドラッシュだ。

 

 

ゴールドラッシュと聞いてわたしたちが最初にイメージするのは現在のカリフォルニア州で発生し、後にアメリカ中に広まったブームのことだろう。
ジェームズ・マーシャルという一人の大工がカリフォルニア州で砂金を発見したことに始まったゴールドラッシュは米国中を巻き込み、男女、大人と子供を問わずに多くの人々が一攫千金を夢見てカリフォルニアに集結した。
結果は知っての通りで、巨万の富を築き上げた人は僅か数パーセントであり、95〜99%の採掘ワーカーは初期投資額さえも回収できないという悲惨な結果となり、夢を掴むどころか困窮に陥る結果となった悲劇的なブームでもあるんだ。
もちろん、経済という側面から見るならば、商品開発や物流などの発展に貢献してくれた一大イベントであったことは間違いない。

 

 

事実、現代ではステータスカードの代名詞として知られているアメリカン・エキスプレス(American Express)が生まれたのもこのときだったんだ。
アメックスの共同創業者、ヘンリー・ウェルズとウィリアム G・ファーゴ、ジョン・バターフィールドの3人による「人が動けば物も動く」という気付きから全ては始まった。
顧客が安心できる補償のもとに荷物を運搬するサービスを開始して、後にクレジットカード会社になってからも変わらず顧客を優先する手厚い補償を提供していることでも有名だ。
そして、これも多くの人が知っている通り、ゴールドラッシュで儲かったのは金を掘りに来た需要者(プレイヤー)ではなく、宿や移動手段、必要物資を提供した供給者(サプライヤー)であることは言うまでもない。
”つるはしビジネス”成功者の一人を上げるならば、有名どころではリーバイスを創業したリーバイ・ストラウスだろう。
彼は人々が採掘に夢中になる中で作業者の動きに注目した。
屈む、立つの繰り返しの動作でズボンがすぐに擦り切れるところを見て、もっと丈夫なズボンは作れないだろうかと直接作業者の意見を聞きながら試行錯誤を繰り返した。
結果として、船の帆としても使われていたキャンパス生地を利用した作業用ズボン、ワークパンツの制作に成功した。
これが世に語り継がれるリーバイス501である。
破れにくいジーンズがカリフォルニアまでの長旅でも重宝されたことは言うまでもないだろう。

 

 

この、いわゆる”つるはしビジネス”に気付いた人たちは、現在でも莫大な利益を上げている。
例えばYouTubeなどの動画サイトを使った配信ブームで儲かったのは、有名インフルエンサーやタレントなどの一部の例外を除けば動画配信者(プレイヤー)ではなく撮影機材を販売しているメーカーや小売業者(サプライヤー)であることは容易に想像がつくだろう。
副業ブームの波に乗った動画編集ビジネスでも同様と言える。
動画編集ブームで本当に儲かっているのはスクールの運営者や商材を販売している発信者や編集ソフトを提供しているメーカーの方だ。
如何に技術が進歩しようとも、経済というものは時代と環境を問わず同じ流れを辿るのだということが分かる事例だね。

 

 

さて、前置きが長くなってしまったが、話を本題に戻そう。

カリフォルニア・ゴールドラッシュが発生した170年前とは違って、今は都市鉱山という身近なチャンスが存在する。
メディアでも度々話題になっているし、実際、古いパソコンやスマホ、ガラケーを熱心に回収している業者もあるではないか。
ならば、家に眠っている古いスマホを掻き集めれば一攫千金とは言わないまでも、それなりのお小遣いになるのではないか!?

 

そんな夢を見た人のためにこの記事を書くことにしたんだ。

 

尚、現在価値があると言われている物質には、富裕層が資産の一部として保有する金や銀などの貴金属の他にはレアメタルと呼ばれる抽出が困難、あるいは算出量の少ないレアな金属(ニッケル、コバルト、チタンなど34鉱種)が存在する。
一方、鉄や銅、アルミニウムなどの抽出、算出量ともに安定した金属のことはベースメタルと呼んでいる。

 

 

わたしたちが都市鉱山で狙うのはこのレアメタル・・・ではなく、現在高値を更新中の金、ゴールドだ。
昔から身近な価値として憧れの対象ではあったけど、一般人が延べ棒を手にすることはなかなかに難しい。
何故なら、グラム単位での価格が非常に高価だからだ。

ちなみに、令和5年9月4日時点での国内金相場は1gあたり9,966円であった。
金の価値が上がり続けている現在、1万円前後で安定するだろうと予想されているので、ここでは1gあたり1万円として計算していくことにしよう。

 

それでは早速、わたしたちに出来る都市鉱山採掘と金の入手方法を見て行こう。

これはそう難しい話ではない。
都内在住の読者であれば、秋葉原辺りにでも出かけてジャンク屋を覗いてみれば良いだろう。
きっと二昔前のガラケーや懐かしのスマホが投げ売りされているはずだ。
店頭のカゴに山積みされているテクノロジーの亡骸を適当に買いあさることで金を含んだ物体を手にすることができる。

 

ここで購入するのは画面が割れたり動作しなくなったスマホでも構わない。
保障対象外のとにかく安いものを適当に入手してみると良いだろう。

 

ここで、手元にあるスマホはどうやって分解すれば良いのだろうという話になる。
昔の玩具のようにドライバーでネジを回して簡単に分解できる代物ではないので、修理や製造の経験すらない素人には抉じ開けることすら困難だ。
修理受付デスクを設けている大手キャリアであればスマホを開けられる人がいるはずだけど、まさかジャンク品を持ち込んで分解を頼むわけにはいかない。

 

頼れる専門家のひとつとして紹介したいのが、筆者もMVNOのサービスを調べているときに知ったアイサポだ。
格安simのサービスでも有名で、iPhoneの修理も手掛けているお店でもある。
修理ができるということは、当然データの破棄を目的とした分解、破壊もしてもらえるということだ。
事実アイサポではZAURUSというスマホシュレッダーを店頭に設置している。
iPhoneの使用、維持からお別れまで一通りのサポートが受けられるお店でもあるんだ。

 

このスマホシュレッダーに投げ込めば粉砕できるわけだけど、中には電池(リチウムイオンバッテリー)が入っているのでそれを取り出さないといけない。
素人にはできない液晶パネルの取り外しをしてもらうことになるので、相応の手数料がかかることを事前に理解しておこう。

 

爆発の危険があるバッテリーを取り外したあとはいよいよシュレッダーにかけて粉砕、粉々になったスマホから一攫千金の素になる金を取り出すわけなんだけど、さて、果たして古いiPhone1台から採れる金の量はどれくらいなのだろうか...?

 

結論は、0.02g程度だそうだ。

これはどのスマホでも変わらない量だろう。吹けば飛ぶ程度の微々たるものだ。

 

最初に話題にした金相場を基準に考えよう。

仮に最高値の1gあたり1万円であったとして、スマホ1台から採れる0.02gの金の価値は200円となる。

例えジャンクで購入してもiPhoneは1000円前後はするだろうし、分解、破砕する手数料もかかる。

精錬して金の延べ棒を作ろうとしたらどれだけのスマホが必要なのだろうね。
気の遠くなるような話だし、手間と費用を考えれば普通に貴金属店で購入した方が早そうだ。

参考までに、精錬作業の依頼には最低でも300kgの金が必要とされている。
だから、本気でチャレンジするなら1500万台のスマホを用意しなければいけないわけだね。

 

たぶんこれはユーチューブの企画にできるよ。
ヒカルみたいに潤沢な資金のある人であればスマホの入手経路まで確保して本気で延べ棒が作れそうだけど、仮にジャンクiPhoneが1台1,000円だとすると、実に150億円もの費用がかかる計算になるので現実的ではないだろう。
ほぼ無料でジャンクスマホを掻き集める方法をとるしかない。
インフルエンサーであれば視聴者から募れば可能だろうか。
いつかやってみて欲しい。

 

付け加えると、今回記事で書いた0.02gはあくまでも金の採取量であって、スマホを構成する原料には銀の他にもレアメタルとして指定されているプラチナやパラジウム、リチウムイオンバッテリーにはコバルトとニッケルが含まれているんだ。
地球上での採掘に限りがある貴重な素材を詰め込んだ物質の宝庫といえるだろう。

 

それらの素材を掻き集めてもせいぜいスマホ1台では120円程度なので、金と合わせても320円程度だ。
1,000円手にするには最低でも3台は欲しいところだ。
当然、そのジャンクスマホを購入する費用と粉砕手数料を考えると大赤字であることは言うまでもない。

個人が都市鉱山で儲けることが不可能であることがこの事実から読み取れるはずだ。

 

PCリサイクル業者が送料無料で大量のパソコンや周辺機器を掻き集めている理由も頷ける。
ひと儲けしようと思えば会社の力で膨大な数を集めなければならない。
さらに国からの援助を受けて業者がようやく利益を得られるというわけだ。

 

カリフォルニア・ゴールドラッシュで本当に儲かったのが”つるはしビジネス”であることは冒頭で説明した通りだけど、現代の都市鉱山ゴールドラッシュでもまた、本当に儲かるのはジャンク屋や関連業種になるような気がするね。

 

今回はお金と副業、そしてテクノロジーというか身近な材料科学のような話題になったけど、普段手にしているスマホを形作っている物質の希少性や価値が学べる話になったのではないだろうか。ちょっとした雑学程度になれたなら嬉しい。

 

それではまた、次回の記事で。

人々が労働から解放される未来 ― サム・アルトマンが目指すAI社会とベーシックインカム ―

AI社会とベーシックインカム

大規模言語モデル(LLM)が話題となって久しい昨今、連日のニュースでChatGPTの名前を聞かない日はないほどだ。愚痴を聞いてくれたり、相談相手になってくれたりもするこの優秀なパートナーは、時には的確な回答を示してくれるだけでなく、ユーモアを交えた面白い返答もしてくれる。まるで人間のようなChatGPTは最初こそ称賛されていたのだけど、いざ賢いAIが身近に現れたことで人々の心に”ある不安”が浮かんだことは言うまでもないだろう。そう、テクノロジーの進化で必ず訪れる社会変化の一つ、機械による仕事の代替だ。産業革命以来、労働者たちが怯え、怒り、混乱してきた変革が、令和の世で再び起ころうとしている。しかも、今世紀は先人達が体験してきた単純労働をサポートする技術革新ではなく、人のコピーにもなり得る人工知能が姿を表しつつあるんだ。少なくとも従来は不可能とされてきた複雑なプロセスと正確な判断を要する仕事の在り方を話題のChatGPTが変えていくことは間違いない。AIによってもたらされる第三次産業革命は、学歴社会において安定と思われてきた頭脳労働者を脅威にさらしている。ホワイトカラーはまさに晴天の霹靂ともいえる急速な変化に見舞われているわけだが、ChatGPTの開発元であるOpenAIのサム・アルトマンCEOは、既に2017年にはAIと仕事の代替について想定しており、その際にベーシックインカムが必要であることを明かしている。驚くべきは、一律の給付を政府に頼るのではなく、民間企業が開発した仮想通貨を全ての人間に配布するというとんでもないアイディアだ。この記事では、そんな若き天才、サム・アルトマンの夢見るベーシックインカムとAIによって仕事が代替される世界とその影響について触れていきたい。

 

あなたを労働から解放する アルトマンの夢見る未来構想

最初に誤解しないでおいてもらいたいのは、サム・アルトマンは決して人々から仕事を奪って苦しめたいわけではないということだ。人類を辛い労働から解放することによってストレスの無い生活を送ってもらうことを目指してAIの発展に取り組んできたということを覚えておいて欲しい。その上で、最初に思い浮かんでくるのが、人々が“どうやってお金を稼ぐのか”という疑問だろう。これについてアルトマンは既に5年も前に解決策を提案している。それが、ベーシックインカムの給付だ。何を今更と思ったかも知れないが、アルトマンは各国政府にベーシックインカムの給付を要請しているわけではない。彼がやろうとしていることは自らが開発した仮想通貨の給付だ。年齢や性別、所得に関係なく、世界中の誰もが受け取ることのできる通貨として「Worldcoin(ワールドコイン)」プロジェクトを画策しているんだ。この計画は今月に入ってから再びニュースで取り上げられるようになったから、既に知っている人もいるだろう。フィナンシャルタイムズによると、新たに1億ドルの資金調達を計画しているとされているが、同社は過去2年で2億ドル以上の調達に成功しているので、ワールドコインの計画は順調と言えるのではないだろうか。

 

仮想通貨「ワールドコイン」の給付に伴うリスク対策

今更説明するまでもなく、サム・アルトマンはChatGPTを開発したOpenAIの創業者だ。安易にハッキングされるようなシステムは作らないだろう。もちろん、安全性についても万全な対策を提唱している。多くの人が懸念するのはベーシックインカムの強奪と不正受給だろう。例えば他人のコインを奪うなどの悪質な犯罪は、ビットコインなど従来の仮想通貨でも発生している。しかし、そこは安心して大丈夫だろう。ハッキングによる仮想通貨の強奪を防ぐためにワールドコインでは人間の「虹彩」をスキャンすることであなたの財産を守ってくれる。アプリで読み込まれた虹彩から持ち主を判別するのはAIだ。ここでもまた、人工知能が重要な仕事を請け負っていることが分かるだろう。本人確認に虹彩を使う理由は、絶対に偽装できないからだ。これまでにも身分証明書の提示やパスワードなど様々な認証方法が開発されてきたが、どれも安全性には乏しくハッキングの危険にさらされてきた。しかし、偽装不可能な虹彩をスキャンすることでこの問題は確実に解消される。生活を維持する上で不可欠な、まさに命に関わる資産であるコインを他人から盗まれる心配がなくなるだけでも心の負担が軽くなるというものだろう。

 

人間から労働を奪うことは悪なのか? 効率化とやりがいの狭間で

実力と行動力を持ち、政財界問わず世界中の人々から注目されている今のアルトマンであれば、ワールドコインを実用化することはもちろん、将来的にはベーシックインカムも実現してしまうかもしれない。そうなったときに問題になるのは、給付を受ける我々の心構えになってくる。ここからはテクノロジー分野の話ではなく、このブログらしく「お金」の雑学的な話になるのだが、筆者が過去の記事でも繰り返し述べているように、通貨というものは【人間を働かせるためのツール】に過ぎないということを最初にはっきりさせておきたい。これについては「モズラーの名刺モデル」をもとにした話をしているので、過去の記事を参照してもらいたい。

 

hikari-note.hatenablog.com

 

当たり前の話ではあるが、かつて人間は、力を合わせて働き、衣食住を確保しなければ生きていけなかった。産業革命以前の世界では子供が貴重な労働力であった理由もそこにある。義務教育が必要な子供たちでさえ長時間の肉体労働に従事していたのは、それだけ「労働」という行為が人類の生存のために不可欠であったからだ。
産業革命で機械化が加速した後の世界であっても根本の部分が変わることはなかった。しかし、工学の発展で生産性が向上し、物とサービスに溢れる昨今では、本当にこの仕事は必要なのかという疑問を抱いている人もいるのではないだろうか。貨幣という人間を働かせるためのツールを得るために、わざわざ限られた資源やエネルギーを無駄にしてまで不必要な作業を強要しているのではないだろうか。
そして、いよいよ人工知能が人間の代わりに働いてくれる世界が目前となった今、人々に労働を促すための「お金」というツールは本当に必要なものなのかという疑問に繋がってくるわけだが、そこは明確に否定させてもらう。
通貨は絶対に必要なんだ。何故なら、資源やエネルギーは有限だからだ。
これについても過去の記事で触れていたかもしれないが、お金はただの電子データに過ぎない、人間が作り上げた妄想上の価値だ。
財政法による制限や世界経済を無視すれば政府が国民ひとりあたり1億円配ることだって可能だ。しかしそんなことをしたらインフレになることは誰にでも容易に想像が付くことだろう。
ではなぜ、インフレになるんだろうか?それは、データに過ぎないお金はいくらでも創造できるが物やサービスは有限だからだ。需要が供給を上回ればインフレが起きるのは当たり前のことだ。
このように、地球上に存在している資源、電気や石油などのエネルギーは有限だ。
AIのお陰で労働から解放された人類が無制限に物を得ることができるようになれば、資源やエネルギーが枯渇することは目に見えている。「お金」には人に労働を促すための役割以外にも、消費を抑制する役目があることが、この話から伝わってくるのではないだろうか。
ZOZOTOWNの創業者である前澤友作氏が「お金のない世界を実現したい」というような話をしていたが、筆者は絶対に不可能だと分かっていた。理由は先の説明からも分かるだろう。お金がなければ無秩序な消費が横行するからだ。
筆者は断じて環境保護論者ではないが、地球上の資源とエネルギーが有限であることは揺らぎようのない事実である。もちろん、ナノテクノロジーの発展でそれさえも克服した未来で「お金」というツールがどのような役割を担っているのかは現時点では断言できない。
労働力という有限の価値が人工知能に置き換わることでサービスの提供は無限となり、資源さえ確保できれば無制限に物が提供できる世界では、きっと我々が想像もできないような生活を送っていることだろう。それが幸せかどうかは分からないが、すべてのストレスから解放され、豊かに生きる人類の寿命が爆増することは間違いない。ライスワーク(ただ生きるためだけの労働)から解放されることで、面倒な人間関係からも解放され、豊かな生活が保障された未来で期待できるのが犯罪率の減少だ。先にも説明した通り他人の仮想通貨を奪うことが不可能であることはもちろんだが、他人から奪わずとも生活できる世の中になれば、100%ではなくとも現状よりは犯罪行為は減少することだろう。職場の人間関係による事件も、無理に働かなくても良い社会が実現すればなくなって行くはずだ。

 

たまにいる労働からの解放を嫌がる人たちは、恐らく仕事を存在意義の確立や生きる「目的」にしているのではないだろうか。
自動運転を例に上げると分かりやすいが、筆者は自動車をただの“移動手段”とみなしている。安全、快適に目的地に到着してくれるのであれば、運転者が人間である必要はない。むしろ気を遣わなくて良いのでAIの方が気楽とも言える。しかし、自動運転をかたくなに嫌がる人は『運転は自分でした方が楽しい』と主張する。筆者の従弟たちは車が趣味なので、まさにその主張を押し通してくるのだが、彼らに『車は“移動手段”に過ぎないから安全性さえ担保できれば何の問題もないんだよ。残すは法的な問題だけだ』と話したところで通じない。何故なら彼らにとって運転は移動手段ではなく「目的」になっているからだ。だからこれ以上話し合ったところで決着はつかないし、感情論のぶつかり合う泥沼の論戦となる。人々が労働から解放される未来の話も同様で、仕事が「目的」の人たちにいくらお金の意味や生活が保障される話をしても通じない。この辺の議論はあきらめて、AIの恩恵が当たり前の世代に切り替わるまで待つしかないだろう。

 

全人類が自由市民になった未来の生き方と価値観

先ずは「仕事」との向き合い方について今一度考えてみて欲しい。
AIによる代替を懸念しているのは、生活の不安からだろうか?それであればベーシックインカムで生活の不安がなくなれば問題ないはずだ。例えば漫画家や作家、スポーツ選手のように、一概にライスワークとはいえない仕事に従事している人たちもいる。彼らには好きなことを追求する気持ちやプロ意識、信念に基づく確固たる想いがあるのだろう。
だが、世の中を支える、我々の生活に必要不可欠な労働に限って安く過酷で、脚光を浴びることのない仕事であったりもする。あなたは劣悪な環境下で何時間も重い荷物を運びたいと思うだろうか。炎天下で何時間も立っていたいだろうか。自分が率先してやりたいと思えない仕事に従事している労働者のことを少しでも考えてみて欲しい。
その人たちがベーシックインカムで生活できて、別なこと、例えば学習や新たなビジネスの立ち上げに挑戦できて、次に繋がるチャンスを得ることができるのであれば、悪いことではないのではないだろうか。

 

SNSなどを見ているとまだお金の意味を理解していない人が散見される。直視したくないのかも知れないが「お金」は他人に”嫌なことを強制するためのツール”だという側面を常に意識しおくべきだ。
誰も好き好んで大雪や炎天下であなたの家に荷物なんて届けない。明日にでも高額当選すれば辞めるだろう。実際、物流業の長時間労働と低賃金が問題になっている。
であるならば、早々に自動化を進めて労働から解放してあげるべきだろう。
こういう話をしていると必ず「労働なくお金を得ることは悪」だと主張する人が出て来るが、そういう人間は十中八九経営者(自分のやりたくない仕事をお金というツールを遣って他人にやらせている人間)であることからも、その真意が分かるはずだ。
AIがより進化すれば、コスト削減で自動化に走るだろう。実際、国外では半数以上の従業員を解雇して人工知能に切り替える企業が続々と出てきている。今のところオフィス勤務の仕事が中心ではあるが、この波はいずれ専門職にも及んでいくことだろう。

 

まとめ

後半はいつもの「お金」の話になってしまったが、テクノロジーの進化、特にAIの話題を扱う上でクリアしなければいけないテーマが労働とお金の話なので、敢えて長く語らせてもらった。

 

ChatGPTの登場以降、隣接分野が大きな変革を迫られている。ゴールドマン・サックスのレポートによれば、AIは3億人のフルタイム雇用に相当する可能性があり、多くの人々が雇用の喪失を経験するだろうと言われている。しかし、連日見聞きする人工知能の急速な変化を追う限りでは、我々が考えていたよりも大きな変化が数年単位で起こるのではないかとも思える。2045年のシンギュラリティや未来予想は、ChatGPTが登場する以前のものだ。情勢は大きく変わってしまった。例えば、検索エンジンの存在が脅かされることで、ネットとの向き合い方が変わると同時に、これまで不可欠だったSEO対策のスキルが重要性を失ってしまったり、ディープフェイクなどの高度な技術を要するものが素人にも簡単に作れるようになってしまったりと、日常生活とビジネスの変化から、悪用に繋がるものまでその波及は広範囲に及んでいる。最終的にはAIによる仕事の代替で自由になった人間の在り方という哲学的なテーマへと繋がっていくのだ。このブログは「お金」を中心に扱っているので、この問題に関してはお金の意味と労働の本質を切り口として語って来た。

 

サム・アルトマンもAI時代の世界という課題に対しては人々と労働という切り口からアプローチしてベーシックインカムの導入を提唱していることからも、やはり人間にとって重要な問題は仕事の代替と生活資金の確保という問題になるので、労働の意味を見直しながら、人間を働かせるツールとしての「お金」と向き合うことは大切なのだと思う。

 

民間企業が主導してベーシックインカムを提供することによる不安や疑念は筆者も把握している。確かに、国家ではない個人の集団に生殺与奪を委ねることには危険が伴うという意見はもっともだ。しかし、法定通貨と並行して使われる仮想通貨が出回るときには再び国会で運用を前提としてワールドコインの給付方法や条件、企業の義務について立法と同時に構築されていくはずだ。法定通貨との関係や税金の話も絡むので、流石に民間企業に丸投げするようなことにはならないだろう。AI時代を目前に控えたわたしたちが出来ることは限られているが、労働とお金の意味を理解することで、従来の価値感を改めれば未来に希望が持てるはずだ。今一度、我々が絶対の価値を置いてきた仕事というものの意味について問いただしてみよう。AIが仕事を完全に代替するまでには、まだ時間が残されているのだから。



最後まで読んでくれてありがとう。また、次回の記事で。

Coinhive事件とは何か?その背後にある技術と問題点

 

ここまで仮想通貨の歴史からビットコインを支える技術であるブロックチェーンまで紹介してきたけど、今日は暗号資産の運用に参入する上で知っておくべき事件について解説して行きたいと思う。

既に解決した過去の問題ではあるのだけど、技術の歴史の一端を学ぶことで将来のリスク管理に役立ててもらいたいと思う。それではさっそく見て行こう。

 

 

I. 本記事で扱うCoinhive事件について

Coinhive事件とは、暗号通貨Monero(XMR)のマイニングスクリプトであるCoinhiveJavaScriptコード)を設置することによって、Webサイトの訪問者に無断でコンピューターを使用して仮想通貨を採掘した事件のことを指す。

つまりCoinhive が設置されたサイトを訪れた人が無自覚にマイニングを行ってしまう事態の是非が問われた事件のことなんだ。

問題はCoinhiveを利用して仮想通貨をマイニングするJavaScriptコードがWebサイトの利用者からの許可なしに設置されていたことだろう。

Coinhive事件は、Webサイト上で仮想通貨マイニングが横行する問題を浮き彫りにすることになるだけでなく、サイト閲覧時のセキュリティに対する脅威としても注目される切っ掛けになったんだ。

 

この記事では、Coinhive事件について、その背後にある技術や問題点、事件から学ぶべきことについて解説して行く。

Webサイトの運営者や利用者にとって本記事が役立つ情報となることを期待している。

 

II. Coinhiveとは何か? 概要とサービス内容

上記でも説明した通り、Coinhiveとは仮想通貨マイニングのための仕組みを提供するサービスだ。

コードをWebサイト上に設置することで、Webサイトの閲覧者のコンピューターを無断で使用して仮想通貨をマイニング(採掘)することができていた。

 

CoinhiveはMoneroという仮想通貨をマイニングすることを目的としたもので、この通貨はビットコインよりも匿名性が高く、CPUマイニングに向いているとされていたんだ。

Moneroは“サイト運営者が”安心して収益を得ることを実現した通貨であったと言える。

特にオンライン広告が不足しているWebサイトや非営利団体などが利用するには最適で、初期の頃は比較的穏健なマイニングコードとして受け入れられていたんだ。

しかし、その後不正なWebサイトがCoinhiveを使用することで、Webサイト利用者のコンピューターを不正に使用する事件が多発するようになってしまう。

また、Coinhiveは利用者の承諾を得ないまま、Webサイト上にコードを設置することが可能であった。

このため、多くのWebサイト利用者がCoinhiveによるマイニングに対して不快感を抱き、Coinhiveは悪評を買うことになってしまった。

考えても見て欲しい、ただサイトを閲覧していただけなのに自分のパソコンがマイニングに利用されていたら嫌な気持ちにならないだろうか。せめてその旨を分かり易く記載していればだいぶ印象が変わったのではないだろうか。

その後ようやくWebサイト利用者の承諾なしにマイニングが行われることを防止するために専用のAPIを提供するなどの対策を講じるようになったんだけど、その時点でCoinhiveの悪評は既に定着しており、多くのWebサイトはCoinhiveを排除するようになってしまったんだ。

 

Ⅲ.Coinhiveが引き起こした事件のあらましとWebサイトへの攻撃

 

Coinhiveが提供していたマイニングスクリプトは、多くのウェブサイトに設置され、訪問者がページを閲覧するだけで暗号通貨を採掘することができていた。

しかし、スクリプトが設置されたウェブサイトが増えるにつれて、悪意のある人々によって悪用されることが明らかになってきた。

Coinhiveスクリプトを利用した不正な活動の1つが、ブラウザ内でのマイニングだ。これはスクリプトをウェブサイトに設置することなく、悪意のある攻撃者がWebページを閲覧している人のコンピューターにスクリプトを直接注入する手法で行われた。

これにより、攻撃者は自分自身の暗号通貨の採掘を行い、被害者のコンピューターの性能を大幅に低下させることができたんだ。

 

ここまでまとめると、問題の中心はCoinhiveスクリプトが設置されたWebサイトの一部は、訪問者に対して警告なしにスクリプトを実行するため、訪問者が自分のコンピューターで暗号通貨をマイニングしていることに気づかないことにある。

サイト訪問者が常にプライバシーに関する問題を抱えることがあるという状況は、安全なネット利用を脅かす脅威と言えるだろう。

特にサイトを閲覧しているだけで暗号通貨をマイニングすることが自動的に承認されてしまう状態は、コンピューターの処理能力を勝手に利用されてしまうということだ。

このような状態をコンピューターの所有者が快く受け入れるはずがないことは、インターネットを利用するものであれば容易に想像できるだろう。

以上の理由から、Coinhiveは、多くの人々から批判を浴び、ブラウザでの暗号通貨マイニングに関する議論を引き起こしたんだ。

 

IV. Coinhive事件が問題とするもの ウェブサイト訪問者のプライバシー侵害とセキュリティリスクの増大

 

ここまで説明してきた通り、Coinhive事件が問題とするものには、以下の点が挙げられる。

 

ユーザーに許可を得ずにコンピューターを使用すること

Coinhiveはユーザーの許可を得ずに訪問者のコンピューターを使用して暗号通貨を採掘していた。

このため、多くのユーザーは自分たちに何が起こっているのかを知らないうちにコンピューター(CPU)のパフォーマンスが低下していたという、妨害行為を受けているような状況に遭遇していた。

 

マルウェアや攻撃者に悪用されるリスクを抱えていた

Coinhiveスクリプトは、悪意のあるウェブサイトに埋め込まれ、マルウェア攻撃やハッキングに悪用される可能性もあった。

また、スクリプトを使用しているサイトは訪問者のコンピューターに悪意のあるスクリプトをインストールするための攻撃の手段として悪用される可能性もあった。

 

コンピューターのパフォーマンス低下

Coinhiveスクリプトは、コンピューターのパフォーマンスを低下させることがあったのは、先に説明した通りだ。

多くのユーザーは、自分たちのコンピューターが遅くなったと感じており、これは彼らがCoinhiveスクリプトを実行していたことが原因である可能性があった。

 

オンライン広告の収益低下

Coinhiveスクリプトを使用しているWebサイトは、広告収益を得るための広告を表示することができなくなる可能性があった。

これはCoinhiveスクリプトが広告と競合することが原因だった。

広告収益が減少すると、運営者は結局、サイトの維持に必要な資金を調達するためにCoinhiveスクリプトを使用する他なくなってしまうんだ。

 

ユーザーのプライバシー侵害

Coinhiveスクリプトは、ユーザーのプライバシーを侵害する危険性を抱えていた。

ユーザーのデバイスCoinhiveスクリプトを実行している場合、彼らのアカウント情報やパスワードが漏洩する危険性があるからだ。

また、Coinhiveスクリプトは、ユーザーがどのようなWebサイトを訪問しているかを追跡することもできた。

さらにCoinhiveが被害者のコンピューターにJavaScriptマイニングコードを埋め込むことによって、そのコンピューターの性能が低下することも問題視された。

これにより、ユーザーが本来の目的でそのコンピューターを使用する際に遅延が発生し、不快な体験を強いられることになってしまった。

それに加えてCoinhiveが開発したJavaScriptマイニングコードは、悪意のある攻撃者に悪用される可能性もあり、ユーザーのコンピューターを不正にマイニングに使用するマルウェアの形で検出されることもあったんだ。

 

以上のようにCoinhive事件は、ユーザーのプライバシーとセキュリティ、そしてインターネット上の広告ビジネスにおける倫理的な問題を提起することとなった。

この事件を受けてCoinhiveはサービスの終了を発表し、JavaScriptマイニングのような不正な活動による被害を防止するためにWebブラウザーなどの開発者による規制が導入されることになった。

 

V. Coinhive事件から私たちが学ぶべきこと セキュリティ対策の重要性と仮想通貨マイニングのリスク

Coinhive事件は、仮想通貨をマイニングするために利用されるJavaScriptの不正使用によって引き起こされた問題である。

この事件から、私たちはいくつかの重要な教訓を得ることができる。

 

第一に、ユーザーのプライバシーは常に尊重されるべきであるということだ。

Coinhiveは、ユーザーの同意を得ずにコンピューターのリソースを無断で使用していた。これは明らかに不正行為である。

オンライン上でのビジネスを展開する企業は、ユーザーのプライバシーに配慮し、倫理的な行動をすることが重要だ。

 

第二に、技術には悪用される可能性があることを認識しなければならないということだ。

Coinhiveは、元々は合法的な仮想通貨マイニングサービスとして設立されたが、悪意のある人々によって悪用されてしまったことを思うと、新しい技術が出現するたびに、その技術の悪用に対するリスクを考慮する必要があるだろう。

 

最後に、この事件はオンライン広告に対するユーザーの不信感を示していることも考慮しておくべきだろう。

多くのユーザーは、広告をクリックすることでマルウェアに感染するリスクがあることを理解しており、広告ブロッカーを使用する者も増えている。

オンライン広告業界は、ユーザーの信頼を回復するためにより透明性の高い広告ネットワークを構築する必要がある。

 

このようにCoinhive事件はオンラインセキュリティとプライバシーに関する懸念を再度浮き彫りにした。

私たちは、より安全で倫理的なオンライン環境を構築するためにこの事件から多くの教訓を得ることができるだろう。

 

VI. Coinhive事件が問題とする点のまとめ 今後の対策と展望

Coinhive事件は、仮想通貨に関する新しい問題点の一例であると同時にコンピューターの性能を無断使用できる技術があることに対する注意を促すことを示した。

このような技術は今後も出現する可能性はあるし、個人情報の漏洩や不正利用といった問題に直面する可能性も十分あることを覚えておかなければならない。

また、この事件はブロックチェーン技術の強力なシステムである分散化に注目することを促してくれた。

Coinhiveの技術は、特定のコンピューターシステムを標的にすることができ、それが事件の深刻な問題点の一つであったが、ブロックチェーン技術は分散型のネットワークであり、一つのコンピューターシステムが標的にされた場合であっても他のコンピューターが請け負うノードでの処理が継続されるため、より安全であると言える。これは、分散型のネットワークが将来的にコンピューターシステムの攻撃や乗っ取りを防ぐために、ますます重要になる可能性があることを示唆している。

事件が不安を浮き彫りにすることでブロックチェーン技術の可能性に期待が寄せられるようになったと言えるだろう。

 

Ⅶ. おわりに 事件のまとめと筆者の考え

Coinhive事件では、日本国内で21人が検挙され、法律家やセキュリティ専門家の間から多くの疑問と見解が示された。

2019年1月より、横浜地方裁判所で公判が始まり、2019年3月に被告人は無罪が言い渡されている。横浜地方裁判所は、事前の注意喚起や警告がない中、いきなり刑事罰に問うのは行き過ぎであると指摘していた。

横浜地方検察庁はこの判決を不服として控訴したが、日本ハッカー協会が控訴費用を募ったところ、多くの寄付が集まったという。この事件によって、ウェブサイト上での暗号通貨のマイニングが問題視されるようになり、その設置には慎重な対応が求められるようになったというのが事件の顛末だ。

 

本件を巡る法律家やIT専門家の見解では警察の対応を問題視するものが多かった。

閲覧者に与える影響やCPU消費率がWeb広告と大差がないという理由で問題はないとする見解も散見される。

しかしながら、無罪判決後もサービスを続けた結果、仮想通貨Moneroの価格が暴落して2019年3月8日にCoinhiveのサービスが終了したこともまた事実である。

私見は、Webサイト閲覧者の意思を無視する形でマイニングスクリプトを動かすことは、倫理的にも合理的にも問題があるものと考えている。

起訴当時の検察が必ずしも無理筋な判断をしていたとは言い難いだろう。

一般的に、Webサイトの閲覧者は自分が訪れたサイトに対して明示的な同意なしに、そのコンピューターの処理能力を使われることを望んでいない。特にCoinhiveが利用するような暗号通貨マイニングスクリプトを動かす場合、それによってコンピューターのパフォーマンス低下が最小限であったとしても、閲覧者が目視で確認できるバナー広告などとは性質が異なることは明らかだろう。

無論、Coinhiveのサービスが違法であるかどうかについては、国や地域によって異なるため、一概に判断することはできない。

しかし、ウェブサイト運営者は、訪問者の同意を得ずにスクリプトを実行する行為が、果たして適切なものであるのかどうかをよく考えるべきであり、本件については自由な研究開発と技術の発展の問題とは切り離して見るべきだと言える。

 

ここまで読んでくれてありがとう。

今回解説したCoinhive事件は、仮想通貨技術が日々進化していく中で私たちが直面する可能性のある新たな問題点を示してくれたことが分かる。

この事件をきっかけに、今後の技術開発において、セキュリティ対策の重要性がさらに高まることが期待される。私たちは、技術の進歩に伴って新たなリスクが生まれることを理解し、それに対して適切な対策を講じることが必要になるだろう。

 

それではまた、次回に記事で。

仮想通貨とブロックチェーン ~ビットコインを例に解説~

前回に引き続き仮想通貨(暗号資産)について話していくつもりだ。タイトルにもある通り、今日は仮想通貨を支える仕組みであるブロックチェーンについて言及して行く。

 

最近はテクノロジー関連の話題を中心に扱っていたから、その視点を軸として経済や通貨に関連する話をしてみようと思う。ここでは知識ゼロの状態でも読み進められて、なんとなくでも良いから今話題の用語が理解できるようになることを目的にまとめてみた。深く学ぶつもりはないけどニュースが理解できる程度には単語の意味を知っておきたいという人には打って付けの記事だと思う。

 

それではさっそく順番に見て行こう。

 

 

 

ビットコインブロックチェーン(Blockchain)

ブロックチェーン(Blockchain) ≠ 仮想通貨(暗号資産)

よく混同されるのがこの二つの単語の意味だ。これだけは最初に記憶しておいて欲しいんだけど、ビットコインという仮想通貨(暗号資産)を維持するのに必要な技術(仕組み)がブロックチェーンなのであって、両者はイコール(=)の関係ではない。

 

例えば、今では生活に欠かすことのできないネットショッピングだけど、これはインターネット上に存在している。お馴染みのECサイトであるAmazon楽天はインターネットという仕組みを利用して成立しているサービスなのであって、ECサイトとインターネットはイコール(=)の存在ではないよね?ビットコインにも同じことが言えるんだ。

 

インターネットの例と同様に、ブロックチェーンの技術もビットコインなどの仮想通貨以外で利用する研究が進められている。例えば配送管理サービスなんかがそうだ。このあとに説明するけど、一つのサーバーに依存することなく複数人で取引履歴を記帳・管理するブロックチェーンの仕組みは、強固なセキュリティから機密性の高い情報を管理するのに適した技術だと考えられていて、現時点でもトヨタなどの大手企業も活用を試みているんだ。

 

いつ、誰が開発した技術なのか?

今や大企業からも注目され、様々なユースケースが想定されているブロックチェーンなんだけど、この単語をメディアが頻繁に取り上げるようになったのはここ数年のことなんだ。

では、いつから存在していたんだろう。

 

切っ掛けは2008年にサトシナカモトと名乗る人物がビットコインに関する論文を発表したことに始まる。暗号技術関連のメーリングリストに投稿したその論文の中で、従来の通貨管理システムを覆すまったく新しい通貨、ビットコインを紹介したんだ。これまでは中央集権的な管理のもとで発行・管理されることが当たり前であった通貨を、国家から独立した個人がブロックチェーン上で分散して管理する技術の提案は衝撃的だった。翌2009年には論文をもとにブロックチェーンが構築され、同年1月4日に運用が開始され、最初のビットコインが送られたんた。記録された280バイト、1回分の取引履歴はブロックの中にしっかりと残っているよ。

 

さて、開発者であるサトシナカモトについては長らく謎の人物とされていて、日本人なのかどうかも分からなかったんだけど、一説によるとファイル共有ソフトWinnyウィニー)を開発したプログラマー金子勇氏ではないかとささやかれている。理由はサトシナカモトが保有しているはずの100万ビットコインが今なお動かされていおらず、メジャーな仮想通貨となっても未だ誰も名乗り出ないことから、無くなっている金子氏なのではないかと言われているんだけど、これは予想の範疇を出ない。

 

筆者としては、サトシナカモトほどの天才であれば(今から十数年先になるかは分からないが)将来1ビットコインあたり3~4千万円の価値がつくことを確信していて、敢えて名乗り出ることもせず保有コインをホールドしてるんじゃないかと思えてならない。

 

ブロックチェーンの仕組み

 

上記は従来の中央集権的な管理システムだ。分かりやすいようにインターネットの仕組みを例にしてみたけど、中央に位置するサーバーを中央銀行、それに連なる個人A~Dを市中銀行に置き換えてみても良いだろう。

 

ここにブロックチェーンを導入することで、完全に中央の管理から独立して通貨の発行・管理を行うことができてしまうのがこの仕組みだ。

 

※ここでは金融・財政制作と国民経済の維持については無視してくれ

 

 

ブロックチェーンでは、サーバーや中央銀行のような第三者機関を置くことなく、各個人をチェーンで結び、ブロックを相互に記録、監視し合うことで存在を維持できてしまうんだ。

 

簡単に言うと、ウソがつけない伝言ゲームと考えると分かりやすいだろうか。中央に管理を任せるのではなく、不特定多数の管理者が相互に管理するシステムによって、虚偽や不正を排除できる仕組みを実現できることになる。

 

もちろん偽装することは絶対に不可能ではないんだけど、実現するためには計算結果の書き変えを行う必要があるんだ。そのためには時間的、金銭的に莫大なコストがかかるので事実上書き変えが不可能と考えられている。

 

もし、不正によってビットコインを得るのであれば51%を書き換える必要がある。これを「51%アタック」というが、いざ実行に移すとなると時間あたり数千万円の電気代が必要になってしまうんだ。別途コンピューターなんかの機材も準備しなければならないし、この段階でいくらかかるか分からない。しかも、これだけのコストをかけても成功する保障はないんだ。ブロックチェーンで不正を行うほど優秀な人間で、わざわざ莫大な資金を投じて書き換えを行うぐらいなら真面目に計算して報酬を得た方が合理的だと気付くはずだ。

 

なお、計算によって得られるインセンティブが俗に言う「マイニング」だ。鉱山にビットコインが埋まっていて掘り起こすという意味ではないことがこれで分かっただろう。

 

仮想通貨とブロックチェーンの台頭で銀行業は消滅するのか?

よく銀行業は生き残りが厳しくなるとか、失業するという心配をする人がいるんだけど、銀行業の「二層構造モデル(中央銀行市中銀行)」の維持を考慮するならば、銀行業を完全に排することは難しいと筆者は考えている。

 

銀行業の終焉については、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の登場によって銀行の二層構造モデルそのものが崩れるのではないかという話も出ているんだけど、仮想通貨とブロックチェーンを根拠とした場合には別な問題になる。結論を言ってしまえば、例えビットコイン等の暗号資産が第二の通貨として普及したとしても、ドル・円などの法定通貨を価値基準としている段階でビットコイン法定通貨に取って代わる可能性はないので、暗号資産の流通が銀行業を脅かすことにはならない。仮想通貨の役割はせいぜい自国通貨の価値が著しく低い、または不安定な国の富裕層が資産を逃がす手段として利用するぐらいのものだろう。ビットコイン等の暗号資産はあくまでも電子上の金、デジタルゴールドだ。ゴールドがあるから貨幣がなくなるわけではないのと同様、ビットコイン法定通貨に取って代わることはあり得ない。

 

ビットコインの利便性と銀行業の代替性

ビットコインはアドレスだけで送ることができるし、ブロックチェーン上に記録されている送金記録は公開されているため、誰であっても確認することができる。また、仲介者として銀行を経由する必要はないので、手数料がかからないのも魅力だ。そういう意味では銀行は使わなくなるだろうし、不要と考えられても仕方がないだろう。また、フィンテックの台頭による銀行業の衰退やAIの進化によって行員の業務が限られてくることはあり得るだろう。その辺はテクノロジー関連の話題なので、通貨としてのビットコインとそれを支える技術を表面的になぞる程度の今回の記事では触れないことにする。

 

ブロックチェーンで実現するトラストレスな社会

我々の社会で中央に管理者を置かなければたちまち秩序は失われて混乱が生じるだろう。人間には理性があるけど、他者の倫理観を無条件で信頼することは難しい。どうしても刑罰を取り入れる必要がある。しかし、ブロックチェーンの世界では不正を働くハードルが極めて高いことは先に説明した通りだ。そして、真面目にシステムの維持に貢献すれば報酬が得られる仕組みを用意している。故に、無駄な悪事に労力を費やすよりも計算に協力してビットコインを手にした方がはるかに安全で効率的と言える。刑罰以外の方法で犯罪を抑制するという画期的なアイディアがブロックチェーンでは取り入れられているんだ。

 

絶対に破ることのできない約束としてのスマートコントラクトもまた、ブロックチェーンに期待されるサービスの一つだ。例えば、ブロックチェーン上に遺言を残すことによって書き換えを防ぐこともできるだろう。これによって100%改ざん不可能な遺言状が実現する。借金の借用書に関しても同様のことが言える。貸主が事前に担保を押さえておけば、万一回収が出来なかった場合にも自動的に債権者に分配することができるなど、応用例は様々だ。このようなトラストレスな仕組みの中であれば、そもそも不正ができないので相手を信頼する必要すらない。相手を疑うことなく取引ができることになる。

 

ブロックチェーンの未来と課題

先ずは未来の話だけど、ブロックチェーンを使った新たな通貨も生まれてくるだろう。フェイスブックが開発したリブラがそれだ。また、デジタル人民元、もブロックチェーンで実現される。日本でもCBDC、中央銀行デジタル通貨の開発は進められている。テクノロジーと通貨の行方は今後も注視して行く必要があるだろう。

 

もちろん、明るい話題ばかりではない。ビットコインという新参通貨とブロックチェーンには様々な課題が残されている。ある側面から見れば、犯罪の減少やトラストレスな社会の実現が期待できるし、実際にそう主張しているテクノロジー系、ビジネス系のインフルエンサーも多数存在している。同時に、先に説明したように銀行不要論も出てきている。筆者もテクノロジーの発展による金融システムの変化は予見しているが、例えどれだけブロックチェーンの仕組みが安全で利便性の高く、そのおかげでビットコインが普及したとしても、仮想通貨が法定通貨に取って代わることはないと断言しておく。一部では「国が税金を回収できなくなって困るから反対するんだろう」と主張する人もいるんだけど、税金の意味については筆者の別記事を参照してもらうとして、そもそも国が介在できない得体の知れない通貨が普及し、それを中心に世界が回るとすれば、どんな世の中になってしまうか想像できるだろうか? 金融、財政政策が出来ない無秩序な世界の出来上がりだ。金本位制の時代のように、国もマネーゲームのプレイヤーとして商人(企業)や個人と資金集めを競争することになるということだ。つまり“お金はみんなが信頼しているから価値があるのだ”という商品貨幣論的な貨幣感に逆戻りすることになるんだ。国が価値を定める国定信用貨幣論とは違い、もはや自然の成り行きに任せる他なくなってしまう。本来税金というシステムは市場に流れすぎた通貨量の調整と法定通貨の価値の裏付け(その国の通貨で納税しなければ逮捕されてしまうという強制力)に利用されているんだけど、商品貨幣論的な通貨である仮想通貨が法定通貨になってしまったら、中世の領主のように財源としての税金を掻き集めることに国は尽力することになるだろう。しかも、採掘可能な量にも限りがあるから、物価上昇に合わせて通貨の流通量を増やすこともできない。要はデジタルゴールド版の金本位制になることによって経済発展を阻害することになってしまうんだ。さらに最悪なシナリオとして、およそ40%ものビットコインを所有する大口保有者たちが一斉に売りさばいたら価格は大暴落するというおぞましい未来だ。このような不安定な通貨を主要な取引に利用することは難しいと言える。あくまでも投機目的や金(ゴールド)と併用してデジタル上にも価値を保管するための手段として捉えておくべきだと筆者は考えている。

 

おまけ ~世界で最初にビットコインでお買い物~

ここまで貨幣論を交えた堅苦しい話が続いたので最後にコーヒーブレイクだ。

みんなは世界ではじめてビットコインで買い物した人が何を買ったか知ってるだろうか。もしかしたら聞いたことがある人がいるかもしれないけど、せっかくなので紹介しておこう。

 

BTC決済を世界で初めて実戦したのはラズロ・ハニエツ(Laszlo Hanyecz)というプログラマーだ。2010年5月22日、ビットコインが誕生して1年あまりが経った頃、彼は1万BTC(ビットコイン1万枚)を使ってピザ2枚を注文することにした。もちろん店が直接ビットコイン決算を受け付けてはくれないので、ネットの掲示板でピザ2枚と1万BTCを交換してくれる人を募集したんだ。今なら喜んで応じるのだろうけど、当時はまだ怪しげな謎通貨という認識が強かったと思う。取り引に応じたのは当時19歳の学生で、彼がピザ店に注文と支払い(2枚で40ドル)をして、その対価として1万ビットコインを受け取ったんだ。

 

この出来事から13年が経過した現在、1万BTCはおよそ334億円に相当する。2年前の4月には一時700億円近くにまで跳ね上がった時期もあったから、そのタイミングで売却したら世界的な富裕層になっていたことだろう。13年前に4000円のピザと交換したコインが数百億円だ。仮想通貨バブルに乗ってひと儲けしようとする人たちが出て来るのも無理はないだろう。

 

しかしこれは結果論だ。未来のことは誰にも分からない。ビットコインの相場が爆上げした現在だから言えることだけど、1万ビットコインがピザ2枚に消えたというのは何とも惜しい話だよね。所得税を50%取られたとしても巨万の富を得られたことは間違いない。もしタイムスリップできたなら、変な試みはしないで1万BTCを死守して10年間待つはずだ。

 

ちなみに、世界初のBTC取引が行われた5月22日は「ビットコインピザデー」と呼ばれており、ピザを食べながら祝われているそうだ。みんなもゲン担ぎにどうだろうか。

 

仮想通貨の運用では腰を据えて寛容に。多少の値動きに一喜一憂せずに保持を貫くべきだと筆者は思った。もちろん、投資は自己責任で判断して欲しい。他人の言葉を鵜呑みにしないで自分でしっかりと調べて、考えて資金運用して欲しい。

 

それでは、また次回の記事で。