ヒカリの学習ノート

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長引く円安を検証する 三極通貨に於ける日本円の立ち位置

円安


一昨年、2022年の段階で長引く円安に不安を抱く人は多かった筈だ。
あらゆる規制が撤廃されて以来、インバウンド需要に活気づいているとはいえ、自国通貨安が継続することは決して心地の良いことではない。

2023年後半に差し掛かっても1ドル149円台に留まる日々が続いていた。
2024年1月現在も1ドル145円台が継続中だ。
異次元緩和の出口を模索する時期である今、植田総裁がマイナス金利政策の解除を決断する可能性は十分あり得る。

ところで、いったいなぜこんなにも円安が続いているのだろうか?
この自国通貨安を脱するときはいつ来るのだろう。
どうすれば円高に持って行くことができるのだろうか。

この記事では長引く円安の原因と2024年以降の展望について触れて行くことにする。

 

現在の円の状況

冒頭でも述べたが、円安傾向は今尚継続しており、止まる気配がない。
2023年1月には130円台であったドル円レートが9月時点では156円台という大幅な下げ幅を示していた。
8カ月で約17%も下落したことになる。
この傾向は、今尚続いていて円高に転じる兆しはない。

三極通貨(三大通貨)とは

このように自国通貨に対して弱気なイメージを抱きそうな状況が続いているが、ここで再確認しておきたい事実がある。
みんなは、世界的に取引量が多く流動性の高い通貨というと、何を思い浮かべるだろうか。
多くの人が米ドル、ユーロなどと答えるだろうけど、そこにポンド、円、豪ドルが加わった5通貨が”メジャー通貨”とされているんだ。
その中でも日本円は米ドルやユーロと並ぶ三極通貨(三大通貨)の一つとされている。

補足として、IMF、国際通貨基金が中国の人民元を米ドルとユーロに次ぐ第三通貨に位置付けており、実際構成割合としては円の8.33%に対して人民元10.92%程度で日本円を約2%上回っているが、ここでは世界経済に於ける円の立ち位置と安値の原因について分かり易く解説するために便宜上米ドル、ユーロ、円との比較を用いて見ていくことにする。

どうして円安が起きているのか

話を円安に戻そう。
私たちの多くは普段、米ドルと比較した為替レートを見て円の相対的な価値を判断していると思うけど、先に説明した通りユーロも世界経済を構成する三極通貨の一つなので、その存在を無視することはできない。
そして、我々の日本円はEU、欧州連合のユーロと比較しても下落しているという事実があるんだ。
具体的には、2023年初めのユーロ円レートは1ユーロ139円台であったが、9月には156円台にまで下落している。下落幅は約11%であり、ドル円相場と非常に近い。
米ドルだけではなく、対ユーロでも同様に下落しているというこの事実、一体なぜそのようなことが起きているのだろうか。

 

参考までに、2023年10月時点での為替相場を示すと、米ドル・円が相変わらず149円台、ユーロ・円157円台という厳しい数字を示している。
残念ながら三極通貨中最弱通貨が日本円であると言わざるを得ない。

買われる通貨の価値

悲観ばかりしていても仕方がないので、なぜ円の売り圧力が米ドルやユーロに比べて高いのかを検証してみよう。
まず、良く買われる通貨がどんなものかを考えよう。
買われる通貨の特徴としては、信用力の高さに加えて金利が高いことが上げられる。
単純な話、金利が高い米ドルやユーロは買われるが、金利の低い円は売られることになる。
特にユーロに関しては、ヨーロッパにおけるディスインフレ(物価上昇率の低下)が米国と比べて緩やかであることに加えて、日銀による金融緩和の維持が、投資家を円売りに走らせている可能性がある。
結果として、高い金利を期待できる米ドルやユーロに流れることになるんだ。
ECB(欧州中央銀行)が9月時点で政策金利を4.5%(0.25%の引き上げ)にしたことも少なからず影響しているだろう。一方で日銀は、0.1%を維持している。

貿易収支

為替レートを揺り動かす要因として考えられるものは他にもある。
特に為替への影響が大きいのが貿易収支だ。貿易赤字を出すということは、自国通貨に売り圧力がかかることを意味する。
逆に買いに転じさせたいのであれば、貿易収支を黒字にすれば良いことになる。
ならば貿易黒字になるよう輸出業を頑張れば良いのではないかと思えるが、事態はそんな単純ではない。
残念ながら、ロシア、ウクライナの問題が存続する今の国際情勢では日本においてエネルギーショックは免れない。
石油やガスといった天然資源の価格が高騰すれば、輸出業にも影響が及ぶ。
今年初旬には一時的に黒字に転じているが、依然として貿易赤字を完全に脱することは困難とされている。
これが、円売りを加速させるもう一つの要因であると言える。

エネルギーショック

尚、ロシアを主因とするエネルギーショックはユーロ圏も例外ではない。
当然、貿易でも影響を受けていて、黒字幅は縮小、2022年度下半期には赤字に転じている。
しかし同時に、赤字の底打ちも早く、今年上半期には早くも黒字に反転しているのも事実だ。
ユーロが根強い実需によって支えられていることが読み解ける事実だろう。
一方で日本も経常収支※では負けていない。
2023年上半期には名目GDP(国内総生産)で0%のユーロ圏に対して2.2%の黒字を付けている。
しかし、この経常収支の黒字を支えているものは対外金融債権における利子配当金を主とする第一次所得収支であることも見逃せない。
輸入取引で物やサービスを売って得た収益であれば外貨から円に交換する動きがあるため円高圧力を加えることができるが、金融取引での収益ではわざわざ外貨に手を付けずに再投資される傾向にあるため、円高圧力に転じ難いのだ。
これが、日本がユーロ圏に比べて強い経常収支を強みとして活かすことができない要因なんだ。

※経常収支は”貿易収支+サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支”として算出される。
日本が得ている対外金融債権の利子や配当は第一次所得収に当たる。

今後も円安が続くのか

では、円安ユーロ高の傾向は今後も続き、三極通貨最弱であり続けるのだろうか?
これについては一定の根拠をもとに、悲観し続けることではないと見ている。
確かにユーロは日本円と比べて買われやすい通貨ではあるが、それもECBによる利上げが落ち着けば変わってくるだろう。
市場の動向次第では2024年以降に利下げに転じる可能性も否定できない。
インフレが落ち着けば利上げはストップするだろう。
さらに日銀による政策が見直され、多少なりとも利上げが実行されれば日本円が買い戻されるはずだ。
もちろん、経常収支ではなく大本の貿易収支が黒字に転じない限りは再び円安に振り戻されるだろう。
イスラエルによる侵攻と日本の立ち位置次第では原油輸入に悪影響が及ぶことになる。
いや、現状では欧米諸国には倣わず、日本はイスラエルと距離を置く姿勢を示しているので、もしかすると早期にユーロと差を付けられるかもしれないが、それでも天然資源不足の波が輸出業に及ぼす影響は否定できない。
いずれにしても、さらなる円安圧力が加わる可能性は否めないだろう。

円とユーロ

ここまで円とユーロの比較から長引く円安について検証してきたが、例え世界で二番目に取引比率の高い通貨とはいえ、基軸通貨であるドルと比べればユーロは決して強い通貨ではない。
理由は、ユーロを導入している国が20も存在すること。
各国が自由な経済政策を行えないこと、財政危機の際にECBによる救済に時間がかかってしまうことなどが上げられる。
組織の規模が巨大化するほどに機動性は下がるから当然のことだろう。
もちろん、そのような本質的には弱い通貨であるユーロに対してさえ円安が続いている点は気掛かりなところではあるが、今後、ヨーロッパが金融危機に見舞われる要因はいくつかあるので、円が優位になる可能性はある。
一つは、ECBによる利上げが住宅価格を押し下げていることがあげられる。
この状況が長く続けば、不良債権を抱えた銀行が大きく圧迫されることは間違いないだろう。
さらに、冬にはエネルギー価格が上昇することが考えられる。
厳しい寒さを迎える欧州において、ロシア情勢やイスラエル問題によるエネルギー価格の上昇は到底無視できる問題ではない。
悪いインフレによる利上げが起きれば、投資家が警戒してユーロ売りに動くことも十分考えられるだろう。

まとめ

本ブログでは為替や国際経済についてはあまり触れて来なかったが、長引く円安は無視できる問題ではなかったため取り上げてみた。
興味を持った人は今後の円相場に注目して見て欲しい。

 

それではまた、次回の記事で。