ヒカリの学習ノート

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「お金」が好きなら先ずは知ることからはじめよう!経済からお金の雑学、テクノロジーの動向まで、このブログを読めば一気に学ぶことができるよ。

リボ払いの危険性 - 金利に秘められた罠と歴史的な流れなど -

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タイトルの通り、今日のテーマは金利だ。いつもの経済の話と違って私たちに直接関係する身近なお金の話題になるね。特にこれからローンを組んだりカードを所有したりする新社会人にとっては大切な話になるので、良く聞いて欲しいんだ。

 

私たちの生きる資本主義経済の下で、特に力を発揮しているものが金融資本だ。難しい理屈を抜きにしても「政財界」という言葉からも察することができるように、資金力がそのまま政治経済を動かす原動力となり、やがて権力へと繋がって行くことは知っての通りだ。歴史的な出来事にも、経済やお金の流れが大きく関わっていることが少なくない。

 

普通に生活している自分たちには程遠い話に聞こえてしまうかも知れないけど、タイトルを思い出して欲しい。今日のテーマは「金利に秘められた罠」だ。クレジットカードでリボ払いを利用している人や、住宅ローンを組んで頑張ってお金を払っている人たちにとっては他人事ではないだろう。金利の危険性を知らずに生活していくことは、知識無くしてサバイバルに挑むようなものと言っても過言ではない。

 

金融業(金貸し)と聞くと未だにマイナスな印象を持つ古い考えの人は一定数いるはずだ。筆者もその昔、某消費者金融に入社寸前まで進んだときなどは、親も年上の知人も良い顔をしなかったことを覚えている。しかし、かつては蔑まれる職業の一つだった高利貸しが、後に莫大な富を獲得する手段の一形態と化していることを思うと、金利の魔力に魅せられ、上手く利用して儲けようとする人々がいることは仕方のない話だろう。

 

もちろん、現代では無秩序に貸し手が利率を決められるわけではない。法律が許す範囲内で利子を課すこととなる。

 

一例を挙げると、以下のような条文がある。

 

利息制限法(昭和二十九年法律第百号)

 

第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

一 元本の額が十万円未満の場合 年二割

二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分

三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

 

また、同法5条では、同一債権者から別途ローンを組んでいる場合には、合算した金額を第1条に定める元本として計算することとなる。

仮にキャッシング10万円を借りていたとしよう。その場合は第1条2項の「10万円以上100万円未満」に該当するから、どれだけ高い利率を設定できたとしても最高で18%だ。実際、18%を上限とするカード会社は少なくない。

これを仮に借入期間を1年間、元利均等返済(月々の返済額が一定となる返済方法)で計算すると、初月の利息は1,500円、総返済額が110,004円だ。利息分が10,004 円と考えると少なく感じるし、年間約1万円の負担で急場を凌げるのだと思えばリスクは最小と感じてしまうだろう。この油断がカードショッピングでのリボ払いに繋がることになる。日々の買い物で使ったお金を、翌月以降定額で返済できるなんて最高だ、と。残念ながらその時点でリボ払いの罠に嵌っているんだよ。最初はそんな軽い気持ちでリボ払いを始めるんだけど、後々利子の破壊力に恐怖することとなる。

 

ここから話を進めて行く前に、一旦用語の整理をしておこうか。

 

「金利」は借主が元本に追加して支払う金額の割合のこと

「利子」は借主が元本に上乗せして支払う金額のこと

「利息」は貸主が元本に追加して受け取るお金のこと

 

以上が基本的な用語になる。ややこしいのでここは事前に把握しておいて欲しい。

 

現在、カード会社(特に流通系)の多くがリボ払いに適用している年利は15%だ。グレーゾーンが許容されていた時代ならともかく、今の感覚では高額だ。10万円未満の支払いにも15%を適用しているのは、計算のし易さを考慮してのことだろう。

 

それでは、リボ払いの危険性について、取引例を見ながら確認していこうか。

 

例えば、読者のみんなが60万円の買い物をカードのリボ払いで決済したとしよう。月々の支払い額を14,273円ずつにした。60回(5年)払いにすれば無理のない返済プランだと思うかも知れない。

 

では、最終的な返済額はいくらになるのだろうか。

 

ズバリ、856,380 円だ。

 

60万円の買い物をして、256,380 円も多く支払うこととなってしまった。

これをカード会社は「手数料」と言っているけど、要は利子のことだよね。

 

「なんだ、5年間と考えれば大したことないじゃないか」と思った人はリボ払いの罠にまんまと嵌ってしまった人だろう。思い出してみよう、月々14,273円を60回払いだよ?5年間、毎月返済を迫られることになるんだ。

本当に怖いのがこのあとの展開なんだ。社会人になってカード決済の手軽さに魅了されてしまい、ついつい2枚目、3枚目とクレジットカードを発行して行くことになったら、どうなってしまうのだろう。

 

カード審査の話についてはここでは詳しくは言わないけど、流通系と消費者金融系は基本的に通過し易い。半年程度空ければ発行申し込み記録も消えるので、また次が作れてしまう。最終的に破産か債務整理をして信用情報機関の名簿に「異動」が書き加えられるまでの間は、返済用の借金と買い物というループを延々と繰り返すことが可能となってしまう。

 

例に挙げた60万円のリボ払い(15%)では、借主は以下のような返済を繰り返すことになる。

 

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※金融広報中央委員会「暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト」返済シミュレーションより

 

あくまでも返済例の一つだが、どうだろうか。

毎月14,273 円ずつの支払いで、利息分が初月7,500円ということは、元本が6,773円しか返済できていない、6か月目にしてようやく利息分が元金を下回る計算になる。

 

これが複数個所からの借り入れになってしまうと、なかなか減らない元本に衝撃を受けることになる。特にグレーゾーン金利時代の消費者金融を利用していた人は10万円の返済ですら遠い将来に感じたことだろう。

 

今回の返済例でも256,380 円も多く支払うことになっている。

よほど急いで用立てないといけない事情でもない限りは地道に貯めた方が得だということが分かるだろう。

 

返済額の計算方法は、

 

借入総額×15%÷12=年利

 

というように自分でも出来るんだけど、支払い回数が多いと計算量も増えるから手間だし、途中で計算ミスする恐れもある。

 

また、多くの場合は支払い後残高(残り返済額)が規約で定められた金額以下になるまでの間は最低支払元金に利子を加えた金額が計上される。

 

リボ手数料は支払いプランによって変わってくるので各カード会社のサイトでチェックしてみて欲しい。

 

カード会社の規約によって変わる計算方法がややこしい人はリボ払いの返済シミュレーションを使った方が手っ取り早いだろう。これは各カード会社で用意されているので、気になった人は調べてみて欲しい。

 

ここまでの話で伝えたかったことは、計算のややこしさではなくてリボ払いを積み重ねることの怖さだ。なかなか元金が減らないから返済してもカードの利用可能額が回復してくれない。欲しいものを即買う癖がついているので、また別なカードでリボ払いをしてしまう。これを延々と繰り返して行くうちに、気付けば利子の支払いに追われていたという話はよくあるんだ。より具体的にリボ払いの怖さを知りたい人には宮沢りえ主演の映画「紙の月」をお勧めしたい。業務上横領に走った銀行員の女性が主役だが、今回話題にした積み重なる支払いの怖さ、金銭感覚が麻痺することの危険性を学ぶには良い作品だ。

 

これらは冷静に考えると単純な仕組みだし、自分のキャパシティーを超えた借金なんてしないと思ってしまうかも知れないけど、現金と違って支払いに伴う心理的負担が少ないから金銭感覚が麻痺してしまうんだ。苦しくなった頃には既に手遅れという人も少なくない。

 

せっかくなので、ここからは利子について考えてみようか。

 

金融関係の人が利子の意味を語るときには大抵の場合「お金の便利さを一定期間手放すことへの損失補償として、貸主が受け取る対価」と説明しているんだけど、それにしても高額だと思うわないだろうか。特に、グレーゾーン金利が許容されていた時代の消費者金融が取り立てていた金利は、出資法が定めていた年利29.2%を上限としたギリギリの利率を取り続けていたんだ。グレーゾーンと言われる所以は利息制限法が定める上限20%を超えつつも、出資法が定める上限以下でキープした金利帯だったからだろう。

 

今日のテーマでもあるリボ払いでは、そのような利子の罠に嵌って返済不能に陥る危険性について話ったよね。特にグレーゾーン金利の時代には、返済のための借金を積み重ねる、多重債務で破産する人や命を絶つ人が少なくなかったんだ。これだけ聞くと、利子がもたらす悲劇が金融業の発達した近代以降から社会問題化したかのように思われているが、実はそうではないんだ。事実、紀元前4世紀の哲学者、アリストテレスは、その著書「政治学」の中で「貨幣が貨幣を生むことは、自然に反する」と述べていて、利子の在り方について疑問を呈していた。遡ること千年以上前の紀元前18世紀には、バビロニア王国の「ハンムラビ法典」に利子の上限を定める旨が記されている。それくらい、遥か昔から利子の危うさは為政者の間でも気付かれていたということだ。

 

利子は経済成長を促す役割を果たす一方で、ごく少数派への富の集中を招く手段でもある。生真面目な人こそ騙され易く、ずるい人こそ儲けられる、それが利子という道具だ。

 

「紙の月」と一緒に「お金」をテーマにした作品の一つとしていずれ紹介する予定でいた映画に「殿、利息でござる!」がある。その中で出入司(*しゅつにゅうずか)の萱場杢(かやばもく)が「利息を取る側になるか、取られる側になるかで貧富の差が生じる」というような名台詞を言っているよ。*仙台藩の財政・民政を司った職名

 

この言葉が意味するところを日常から意識で出来ているかどうかで金融経済を制する者と搾取される者との差が生じてきそうだね。

 

ここではかつて問題になった闇金業の規制問題や金融業の在り方について述べるつもりはないんだけど、秩序ある金融業が営まれているはずの現代でも日々の生活の中に利子の罠が潜んでいることを知っておいて欲しいんだ。

 

リボ払いの危険性について把握していれば、上手に使って豊かな暮らしを送ることもできるだろう。大切なのは、「お金」という便利な道具の使い方をしっかりと理解しておくことだ。

 

今日の話はここまでにしよう。

それでは、また次回の記事で。