ヒカリの学習ノート

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MMT(現代貨幣理論)を知る

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ヒカリの学習ノートにへようこそ。

今日は、前回までの記事でも話題に挙げていたMMT(現代貨幣理論)について説明して行こうと思う。

デフレ下の現在、経済を語る場面ではこの用語が頻発するし、数々の議論が展開されていることは、ネットやテレビのニュースを見て気付いていると思うんだけど、そもそも「MMTって何なんだ?」って人が多いと思うんだ。たぶん、テレビや新聞、雑誌なんかでは主流派経済学者や評論家によるMMT批判の方が目立っているから、なんとなく怪しい理論のように思われているかも知れない。筆者が目にする情報も、殆どが否定的な見解だった。特に銀行家や投資家にはMMTアレルギーの人が多い印象だ。

とはいえ、これから説明するMMTは、暴論でも何でもなくて、純然たる事実を言っているに過ぎないんだ。

銀行が信用創造(与信行動)でお金を創出していること、要は借入が預金を増やしていることについては、参議院決算委員会(平成31年4月4日)で西田昌司参議院議員から質問を受けた黒田日銀総裁も認めている。

貸出しが預金を生み、尚且つ元手となる資金の制約を受けないという市中銀行の仕組みは、日銀の政府に対する貸出しにも通じるものがあるだろう。

 

この問題を巡る議論では種々雑多な見解が溢れており、中には本題であるMMTの理屈以上に暴論とも思える反論が飛び交う場面もあるのだけど、ここではそれに対する反論を取り上げるわけではなくて、MMTとはどういうものなのかを淡々と説明することに終始するつもりだ。本質が分からないと賛否を決めることも難しいからね。そして、今、日本が置かれている経済状況と照らし合わせた上で、各々が判断すれば良いと思う。

 

このテーマは昨年の5月、ちょうど東京で緊急事態宣言が解除されたあとに取り上げる予定だったんだけど、他の記事の掲載が先行してしまったため遅くなってしまった。どうしてその時期に発表したかったのかというと、経済評論家の三橋貴明先生の番組に、あの人気ユーチューバーで実業家のラファエルさんがゲスト出演して話題になったタイミングだったからだ。ラファエルさんが経済に精通していることや、三橋先生を尊敬していることは筆者も知っていたんだけど、まさかお二人の対談が実現する日が来るなんて思わなかったんだ。時期は逃してしまったんだけど、今後興味を持つ人が出て来る可能性に期待して、この機会にMMTの解説をまとめることにした。

 

なるべく簡潔で分かり易い説明を心掛けるつもりだ。バランスシートを使って解説する方法もあるんだけど、今回は視覚的にイメージし易いように示して行くことにする。

先ずは大まかな全体構造さえ掴んでしまえば速いので、図を見ながら流れを掴んでもらいたいと思う。


政府の新規発行国債を日銀が直接引き受ける場合(日銀直接引受)

 

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日銀が直接国債を引き受けた場合

図を見ながらで良いので、順に確認していこうか。

 

先に日銀が政府から国債を引き受ける(買い入れる)場合を考えてみよう。政府が国債を発行した後の流れは、大まかに以下の通りだ。

 

  1. 政府が新規に国債を発行して日銀に購入してもらう。日銀は、国債の購入代金の支払いとして政府の日銀当座預金を増加させる。これが、日銀の政府に対する信用創造(与信行動)だ。
  2. 当座預金を増やした政府は、その資金を使って公共事業を発注する。そこで、発注先の企業、例えば建設会社に政府小切手(*現在この方法は用いられていない)を振り出して、工事の依頼をする。
  3. 政府小切手を受け取った建設会社は、そのままでは社員の給料を払えないので、現金化する必要がある。さっそく、取引先の銀行に小切手を持ち込んで、代金を取り立てる。
  4. 政府小切手を受け取った銀行が、建設会社の口座に小切手相当額を入金(記帳)する。この瞬間に新たな預金が創造(民間の貯蓄が増加)されたことになる。銀行も小切手だけ持っていても仕方がないから、日銀に対して小切手相当額の取り立てを依頼する。
  5. の国債発行で増やした政府の日銀当座預金から、政府小切手を受け取った市中銀行の日銀当座預金に小切手相当額が移動する。そうすると、市中銀行の日銀当座預金が増えるので「超過準備」が発生する。銀行は、超過準備分を解消するために国債を購入する。これによって国債金利は低下する。

 

さて、どうだろうか。これが日銀直接引き受けだ。

注目したいのは、政府の国債発行によって民間貯蓄が減るのではなく逆に増えていること、国債金利が高騰するのではなく下がっていることだ。政府が国債を発行すると民間貯蓄(みんなの銀行預金)が減少するという理屈が当てはまらないのだから、民間貯蓄の不足で金利が高騰するという批判も当てはまらない。

 

さて、このぐるぐる回す動きは延々と行うことができるし、もちろん財政破綻もしない。

といっても、デフレ下での話だ、インフレ率を達成して好況となったならば、今度は国債発行を抑えるなり、増税するなり、社会保障費を縮小するなりすれば良いだろう。そのときこそ緊縮を行えば良いという話だ。

 

ただし、今説明した方法は財政法5条によって原則禁止とされている。

 

財政法 第1財政総則 第5条「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」

 

要するに財政節度の維持やハイパーインフレ、日本通貨の信用失墜の回避が目的なんだね。

例外として国会の議決があれば直接引き受けを行うこともできる。

では、その都度国会の議決を経て国債を発行しているのかというとそうではないんだ。あくまでも財政法が禁止しているのは日銀による直接引き受けであって、市中銀行が国債を引き受けることまでは禁止していない。

 

次に説明するのがその「市中消化の原則」なんだけど、現行法の下で実行されているのがこの方法なんだ。先程の内容と大きくは違わないので、一つ一つ確認してみて欲しい。

 

これについても図を示しながら説明していこうか。

 

政府の新規発行国債を市中銀行が引き受ける場合(市中消化の原則)

 

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市中銀行が国債を引き受けた場合
  1. 先ず銀行(市中銀行のことだよ)が政府から国債を購入する。購入代金は銀行の日銀当座預金から政府の日銀当座預金に振り替えられる(当座預金残高が増減するだけ)。
  2. 当座預金を増やした政府は、その資金を使って公共事業を発注する。そこで、発注先の企業、例えば建設会社に政府小切手を振り出して、工事の依頼をする。
  3. 政府小切手を受け取った建設会社は、そのままでは社員の給料を払えないので、現金化する必要があるね。さっそく、取引先の銀行に小切手を持ち込んで、代金を取り立てる。
  4. 政府小切手を受け取った銀行が、建設会社の口座に小切手相当額を入金(記帳)する。この瞬間に新たな預金が創造(民間の貯蓄が増加)されたことになる。銀行も小切手だけ持っていても仕方がないから、日銀に対して小切手相当額の取り立てを依頼する。
  5. の国債発行で増やした(市中銀行から受け取った)政府の日銀当座預金から、政府小切手を受け取った市中銀行の日銀当座預金に、小切手相当額だけ移動する。しかし、今度は超過準備には陥らないよ。何故なら1.の国債購入時に政府当座預金に移動した資金が再び銀行の当座預金に戻ってくるだけだから、国債の売買による日銀当座預金額の増減はない(元通りになるだけ)だからだ。

1.で国債を引き受けるのが日銀から市中銀行に変わっているだけで、流れとしては直接引き受けと変わらないよね。違いがあるとすれば5.で銀行の日銀当座預金が増加しないことだ。当然だよね、国債購入時に市中銀行から政府に支払われたお金(当座預金)がそのまま戻ってきているだけなんだから。

 

ここから更に、日銀が市中銀行から国債を買い受ければ新たに日銀当座預金が付与(増加)されることになるだろう。

 

以上の通り、市中消化の原則でもこのプロセスを繰り返し行うことができるし、日銀直接引き受けのような問題(当座預金残高の増加)も発生しない。もちろん、国債金利も上昇しないんだ。この方法を用いる際に注意するべき点としては、インフレ率だけだろう。

 

念のため付け加えておくけど、市中銀行が国債を買い入れたとしても、それは銀行の日銀当座預金(中央銀行から供給された)から支払われるのであって、民間貯蓄(私たちの預金) を使って購入されるわけではないから、私たちの預金が減少することはないんだ。同時に、金利が上昇するという心配がないことも、市中消化による一連の流れから読み取ることができるだろう。

政府が国債を発行して財政出動しても財政破綻が起こり得ないと言われる理由はこれなんだ。

※通貨の価値を支える資源と供給力が棄損していない場合に限る(戦中戦後は例外)

 

最初の日銀直接引き受けの話に戻るんだけど、超過準備の解消のために銀行が国債を購入することによって国債金利は低下するよね。でもその場合には、日銀が政府から引き受けていた国債を銀行に売却して溢れた日銀当座預金を吸い上げてあげるという手段がある。見方を変えれば銀行が政府から国債を購入して余分な日銀当座預金を消化しているのと同じだよね。結果として、直接引受も市中消化の原則と同じことをやっていることになるんだ。つまり、国債金利は不変であると言える。

 

尚、国債の利払いにどう対処していくのかについては「政府の負債をチャラにできる?国債のキャンセルは可能か」で前後編に分けて触れているので、気になる人はそちらの記事も読んでみて欲しい。

 

まとめると、日銀直接引き受け、市中消化の原則、いずれの場合も財政出動によって新たな民間貯蓄が創造されていることが分かる。国債の金利も、先に説明した通り、直接引き受けであれば日銀が市中銀行の超過準備分を国債売却によって吸い上げてあげれば国債金利が上昇することはない。本質的には市中消化の原則と変わりがないと考えられるね。

尚、度重なる量的緩和(日銀が民間保有の国債を購入することによって銀行の日銀当座預金を増加させる政策)によって、国債金利は下がり続けている。日銀当座預金をいくら増やしたところで民間貯蓄が増えることはないから、先に説明した通り、民間の預金を増やすためには財政出動するしかないんだ。

量的緩和を止めたところで金利が高騰することがないことは、“貸出しが預金を生む”市中消化の原則の仕組みからも明らかだろう(財政赤字が金利を高騰させる心配はない)。仮に日銀直接引受を実行したとしても、先程提案したように日銀が政府から引き受けた国債を市中銀行に売却(超過準備を吸い上げる)することによって市中消化の原則と同じ効果を実現することができるんだ。つまり(超過準備を使って国債を購入することにより)国債金利が低下するという懸念はない、国債の金利は不変ということになる。

 

後半から、国債キャンセルの記事以来のややこしい話になってしまったかも知れない。最初はなかなか理解できないだろうけど、繰り返し学んで整理していけば次第に理解できるようになる筈だ。

 

最後まで読んでくれてありがとう。少しでも財政出動と国債発行の仕組みに興味を持ってもらえることを願っている。

 

それでは、また次回の記事で。